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見なかったフリ、知らなかったフリ
というのは、こんなにも自分に
向いていない行動だとつくづく思い知らされる。
だって、カフェを出てから少し行った所にある池が有
名な大きな公園に来たっていうのに、鞄の中にしまっ
たはずの携帯がさっきから気になって仕方がない。
夕暮れ時の中、大きな池を目の前にした木のベンチを
指差した加納くんを追って隣に座ると、そこは少し冷
んやりしていた。
しばらく、たまに通る犬の散歩をしている人や、足早
に帰路につく人、友達と笑いながら歩く女子高生たち
を遠巻きに眺めていたら、自分の片手に温もりを感
じ、視線を落とすと加納くんによって握られている。
嘉「冷えてきたから、これで少しは違うかなって。」
優しく微笑む、加納くん。
穏やかな時間って、こういうことを言うのかな…?
嘉「…僕と前に進むことを決めてくれて、嬉しいで
す。」
加納くんは前を向いたままそう言ったけれど、それを
言われてなせが胸がチクッとする。
嘉「絶対悲しませないし、辛い思いもさせません。」
「加納くん…、」
今度は握られた手にギュッと力が入るのが分かり、こ
ちらを見たかと思うと、空いている方の手で私の髪を
そっと撫でてから、距離を縮められる。
だけどその瞬間、私は思わず立ち上がってしまった。
当然、握られていた手は離れたわけで、加納くんは目
を丸くして座ったまま私を見上げているのが視界の端
で分かる。
「あっ、あの…えっと…、ほらっ!ここは人通りもあ
るし、どこで誰に見られるか分からないので…。」
しろどろもどろになる理由が、自分でもよく分からな
い。
「ご、ごめんなさい…。」
嘉「いえ…。自分も軽はずみな行動とってしまったの
で…。」
私、今めちゃくちゃ失礼な態度とっちゃった…。
罪悪感からか、自分の両手を触るクセが発動していた
ら、
嘉「夕飯、どこ行きますか?」
何事もなかったように微笑んだ加納くんは、立ち上が
る。
もう辺りは薄暗い。
本来だったら次の場所へ…と、なるはずが二つ返事が
すぐに出来ない。
その理由はたぶん、一つだけだった。
「あの!私っ…、急に用事を思い出しちゃって…。」
嘉「えっ…、」
「だから…、ごめんなさい!」
頭を勢いよく下げて上げると、加納くんは眉を下げて
微笑んだ。
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みそじ(プロフ) - ましゅさん» お返事遅れてしまいごめんなさい( ; ; )こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2021年3月22日 22時) (レス) id: 4773dc142a (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ - わぁー(;_;)壱馬くんsideとカリンsideありがとうございました!良かったです。改めて完結おめでとうございます☆ (2021年2月28日 22時) (レス) id: ad7747e186 (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - ma9さん» お褒めのお言葉ありがとうございます!更新できるよう頑張ります! (2021年2月12日 10時) (レス) id: 6c1fcd7cbb (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - まりさん» コメント&お褒めのお言葉ありがとうございます! (2021年2月12日 10時) (レス) id: 6c1fcd7cbb (このIDを非表示/違反報告)
ma9 - おまけストーリー面白かったです。サイドストーリー楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2021年2月8日 22時) (レス) id: aa709fe039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みそじ | 作成日時:2020年10月19日 12時