私はわたしー愛しい距離４ー

おまけーカリンー ページ38

やっと既読がついたと思ったら、

絵文字無しの定型文みたいな返信。



川村壱馬すいません、俺は行けないです。



カリン「はぁ…。」



ヘアメイク中にも関わらず、思わずため息をついて携

帯を目の前のスペースに置くと同時に、専属のヘアメ

イクさんに鏡越しに顔色を伺われた。



ヘアメイクさん「ため息なんか、珍しいじゃん？」


カリン「別に〜。」




勝算がないのは、もう分かってる。


あの二人の関係が修復するのも、時間の問題だっての

も分かってる。




それでも少ない確率に賭けてみたいなんて、口が裂け

ても言えない。




その時、隣の席に座っていたモデル仲間が携帯片手に

声を上げた。



カリン「何、急にビックリするじゃん。」


モデル仲間「えっ？！あっ…いや…、」



モデル仲間が携帯と私を交互に見る姿を不審に思い、

問い詰めると渋々携帯の画面を見せながら、



モデル仲間「壱馬くんって、カリンと良い感じなんじ

ゃなかったっけ…？」




受け取った携帯の画面にはネット記事が映し出されて

いて、大々的な見出しにすぐ目がいった。




【EXILEの弟分The Rampage 川村壱馬 一般人女性

と真剣交際宣言 「結婚を前提にお付き合いさせて頂

いています」】




カリン「…。」



やっぱりね…、なんて言葉を必死に飲み込んで、動じ

ないふり。




モデル仲間「なっ、なんかの勘違いとかだよね？！だ

ってほらっ、良い感じだってこの前言ってたばっかり

じゃん？！」




顔を覗き込まれたと同時に、私はズィッと携帯を彼女

に手渡して、目の前の鏡に視線を移す。



カリン「そんなこと言ったっけ？」



モデル仲間「え…だって、」

カリン「そんなことより、この前言ってた展示会行っ

た？あたし、まだ行けてなくてさー。」




彼女が何か言いたげな顔をしているのも分かっていた

が、気づかないフリを続けて私は話し続ける。




なにこれ。

私、さっきから動じない、気づかないフリばっかり。




しばらくしたら、彼女はスタッフに呼ばれて席を立

つ。



それを見計らっていたように、専属のヘアメイクさん

の手も止まった。



ヘアメイクさん「はいっ、こんな感じでどう？」


カリン「うん…、ありがと。」





手際良く、カチャカチャと道具を片付ける姿を鏡越し

に見ながらもう一度思う。

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