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壱「あ…、いや、」
口籠る彼を目の前にして頭にハテナを
浮かべていたら、パッと手首は離される。
壱「いや…、やっぱ送ってく。」
そう言って上着も着ずに靴を履こうとしたので、私は
それを慌てて止めた。
「大丈夫だから！やっと良くなったのに、またぶり返
しちゃうよ？！だからもう、ここで！」
そして私はそそくさと壱馬くんの返事も聞かずに、じ
ゃっ！と、玄関を飛び出した。
一度だけ背後で聞こえた、私の名前を呼ぶ声。
今度こそ、その声を直接聞くことは無いかもしれな
い。
もちろん、私の名前を呼ぶことも…。
足早にエントランスに降りて外に出ると、冬空の晴天
が出迎える。
まだ午前中だけあってか、人もまばらな大通りでタク
シーを拾い、家路につく。
タクシーの窓を通り過ぎる景色の中、初めて壱馬くん
と二人でライブ会場から帰ったことを思い出した。
あの時もタクシーで帰って、敬老の日のプレゼントを
買う約束からの、連絡先も交換したんだっけ…。
当時は壱馬くんと、どんどん距離が近くなるばかりだ
った。
だけど今は、どんどん距離が離れていかなきゃいけな
いなんて…。
鼻がツンとしてきたら、もう考えちゃいけないサイ
ン。
明るい日差しが目を細める中、ちょっとだけ鼻をすす
って深呼吸をした。
人生初めてかもしれない。
朝帰りならぬ、無断外泊。
裏口の鍵をそーっと開けて、忍足で階段を上がるが段
数が上がるにつれ、コーヒーの匂いが強まる。
それを感じ、諦めてそっと階段から顔を覗かせるとダ
イニングでコーヒーを目の前にしたパパの、少しムス
ッとした声が新聞の向こう側から聞こえた。
父「おかえり。」
「たっ、ただいま…。」
そろりそろりとパパの目の前に座り、三つ指をテーブ
ルに立てて謝る。
「連絡しなくて、ごめんなさいっ！」
するといつもより大きくガサッと音をたてて、新聞を
テーブルに置いたパパは少し眉間に皺寄せて、
父「もう子供じゃないから、外泊がダメとは言わな
い。けど、ここに住んでいる以上は心配もするし、ち
ゃんと連絡を入れてほしい。」
「はい…、心配かけてごめんね？」
父「加納くんにも、よく言っておくこと。分かっ
た？」
そうだ…、パパには加納くんと出かける予定しか話し
てないんだよね…。
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みそじ(プロフ) - ましゅさん» お返事遅れてしまいごめんなさい（ ; ; ）こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2021年3月22日 22時) (
レス) id: 4773dc142a (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ - わぁー(;_;)壱馬くんsideとカリンsideありがとうございました！良かったです。改めて完結おめでとうございます☆ (2021年2月28日 22時) (レス) id: ad7747e186 (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - ma9さん» お褒めのお言葉ありがとうございます！更新できるよう頑張ります！ (2021年2月12日 10時) (レス) id: 6c1fcd7cbb (このIDを非表示/違反報告)
みそじ(プロフ) - まりさん» コメント&お褒めのお言葉ありがとうございます！ (2021年2月12日 10時) (レス) id: 6c1fcd7cbb (このIDを非表示/違反報告)
ma9 - おまけストーリー面白かったです。サイドストーリー楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2021年2月8日 22時) (レス) id: aa709fe039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みそじ
| 作成日時：2020年10月19日 12時
