nostalgic ２

５９ ページ9

北ちゃんって…きっと北人くんのこと

だよね…？




確かにこの前、うちのお店に来てくれた時は驚いた。




金髪のヤンキー風な北人くんとは打って変わって、オ

シャレなのはもちろん、大人の男性になっていて心底

ビックリしたんだっけ…。







携帯を見せ合う二人を横目に、私は水を一口飲んで物

思いにふけていたら、テーブルに置いてあった携帯が

着信を知らせるために音を出した。




ー 着信 北人くん ー




「えっ？！」




画面を見るなりつい声を出してしまい、隣の女の子た

ちの怪訝な目と目が合う。




しかもマナーモードにしていなかったせいで、着信を

知らせる音がそんなに大きくないとはいえ、店内に響

き渡るので私は慌てて、思わず通話ボタンをタップし

てしまった。






なにも悪いことをしていないのに、身を縮み込ませて

女の子たちとは反対方向に体を方向展開させながら、




「もっ…もしもし…？」



北ーもっしもーし。良かった、繋がってー




相変わらず、柔らかい声でふふっ笑う北人くん。





「ど、どうしましたか？」



北ー来てる？東京ー





うっ…まだ言うか、この人…。





「いっ、いるわけないじゃないですか。」


,北「本当に？」


「本当です！」



北「…そっか…。」





動揺を分散しようとテーブル上のおしぼりを、意味も

なく触っていたら店員さんが頼んだものを持って来

たので、これみよがしに電話を終わらせようとする。





「それじゃぁ…切りますね！」


北「えっ！あっ、ちょっと！」






通話終了をタップした私は、ふぅと息を吐く。




これでいい。




こうやって彼に近いものは全て遠ざけなければ、いつ

まで経っても忘れられないから。









その後、同じ会場に向かうであろう隣の子たちが席を

立って少ししてから、私も会場へ足を運んだ。





チラホラ男の人はいるものの、それでも女の子が圧倒

的に多く、逆になんだか萎縮してしまう。





そんな中、チケットに記載された席に腰を下ろした私

は顔を上下左右に動かしながら、目をぱちぱちさせて

しまった。






すごい大きな会場と、たくさんの席。




こんな大きな空間自体が私の地元には無いし、もしか

したら生まれて初めての経験かもしれない。





これほど大きな空間で、こんなにたくさん人達と過ご

す時間はどんなものなんだろう。

６０→←５８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す