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射撃訓練が終わった昼下がり、鬱と少女は近々あるガーデンパーティーについて花を咲かせていた。いや、片方は咲いてると言うより萎れているが。
この国には、女王陛下主催のガーデンパーティーが毎年一回行われる。そこには各国の王族や首相に大臣、各界隈で名を挙げた著名人等が招待され、その日だけは国全体でのお祭りとなるのだ。
勿論、軍の幹部である彼らや総統であるグルッペンにも招待状は来る。だが彼らは、機嫌の取り合いや腹の探り合いよりも、仲間たちと共に馬鹿騒ぎしながら祭りを楽しむ方が好きだった。
その為彼らは今まで、文句が来ない程度に出席と欠席を繰り返す者か、必要最低限出席しては城下町へと遊びに出かける者に別れていた。
しかし今年はそうもいかない。何せ彼らには教え子であり庇護下の少女がいるからだ。
このパーティーに参加する人達の権力や名声を考えれば、少女の人脈と評判作りには売ってつけであった。勿論護衛の為に幹部は総動員。欠席している少女の両親の代わりにグルッペンも参加していた。
今の国の体制ができて以来の全員参加である。
(行きたくねえ……)
自分達の大切な教え子の言わば晴れ舞台。あの夜のパーティーではなくもっと大々的に表に出る目出度い日。だが、いくらそう言えど憂鬱なものは憂鬱。出そうになる溜め息を飲み込むばかりだ。
「鬱様、今年はクレマチスがとても綺麗に咲いてるそうですの」
「彼処の庭は毎年綺麗だからねぇ、楽しみ?」
「はい!とっても!」
行きたくない。行きたくはないが教え子があんなに楽しそうにしてるのに行きたくないとか言えない。この輝かしい笑顔を悲しみで曇らせたくない。あと大切な教え子の晴れ舞台見たい。
理由が子煩悩な父親のそれである。
「ふふ、どんなパーティーになるのかしら」
(この笑顔プライスレス)
「ついに来たか……」
「今年も律儀に……てか俺らが嫌なん分かっとるやろ国王陛下。嫌がらせか??」
「行きたくない人混みとかまぢむり」
「図書館に引き篭もってたい」
「部屋でずっとゲームしてたい」
「…………けど言えない。言えるわけない」
「当たり前やあんな楽しみにしてるんやぞ」
「幻滅されたくありませんし」
「「「…………」」」
保護者とはつまりそういう事だ。
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とうふ(プロフ) - 白猫さん» ありがとうございます!ノロマな更新ですが、これからも応援よろしくお願いします (2020年4月17日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 面白くて一気に読んでしまいました!笑 とても面白く想像しやすかったので、楽しく読めました! 更新頑張ってください。応援してます! (2020年4月17日 7時) (レス) id: 324236a98a (このIDを非表示/違反報告)
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