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「さて、定例会議を始めよう」
少女がここに来た最初の日に入った部屋に、二人の空席を作りつつ、グルッペンとほか幹部らは集まっていた。
定例会議と呼ばれるそれは、総統と幹部しか参加することが認められない。国の行く末を決める重要な会議だ。
───なんてことは無く。ただグルッペンの気分で集められただけである。そも定例会議ではなく”不”定例会議だが。
(ヒント:主催者はグルッペン)
閑話休題。
「まずエーミール」
「はい。手元の資料にある通り、昨夜エルリカさんの寝室に侵入しようとした人達は雇われの傭兵でした。契約者は”ゴールド・フィップス”という他国の貴族だとか。十中八九嘘でしょうね」
「エミさんに頼まれて一応俺が調べたけど案の定やったわ。フィップス家自体はあったけど貴族とは呼べないほど没落してた。その傭兵らが提示した額なんて到底払えへん位にな」
「ふむ、二人ともご苦労。次にゾム」
「グルッペンの指示通り部下をそれぞれ配置させとる。今の所順調に証拠落としてくれとるわ。ほんまガバガバ警備やで」
「お前らの部隊を通さない警備とか逆に知りたいんだが」
「オスマン。招待客達の件についてだが」
「万事恙無く。部下が優秀やと上司は楽やね。羽虫共をばんばん落としてくれるから助かるわ」
「羽虫はいいが程よく残しておけ。蜥蜴を釣る餌になる」
淡々と会議は進められていく。
そこには、頑張る少女に柔和な笑みを浮かべるエーミールはいない。自分より少し小さな少女を気にかけるロボロはいない。少女の楽しそうな笑顔を見るのが大好きなゾムはいない。未知に出会う少女をそれとなく導くオスマンはいない。
姪が大好きで大切な叔父のグルッペンはいない。
少女の成長を第二の保護者のように見守り、時には教える保護者のような彼らはいない。あるのは絶えず内外に敵を持つこの大国を、建国当時から守り続ける軍人のみ。
いずれ少女も、軍人としての彼らを目の当たりにする事だろう。戦争で多くの命を手に掛けて、敵に対する躊躇も情けも持たない軍人達を。
少女はエーミールがこの国きっての調教師であり拷問師である事を知らない。
少女はゾムがこの国の中で一番殺しが上手いことを知らない。
少女はロボロが画面越しにボタン一つで人を殺せる事を知らない。
少女はオスマンが多くの人を貶めてきた事を知らない。
少女が彼らの裏を知る時は、恐らく少女が”彼女”へと変わった時だろう。
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とうふ(プロフ) - 白猫さん» ありがとうございます!ノロマな更新ですが、これからも応援よろしくお願いします (2020年4月17日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - 面白くて一気に読んでしまいました!笑 とても面白く想像しやすかったので、楽しく読めました! 更新頑張ってください。応援してます! (2020年4月17日 7時) (レス) id: 324236a98a (このIDを非表示/違反報告)
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