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何なのだろう、この気持ちは。
「…Aちゃんは立派だと思うよ」
「え〜?なんですか急に」
丁寧に塗り薬を塗りながら、Aは視線をちらりとこちらに寄越した。どこか楽しげで、からかっているようなその視線を受け止める。
俺は真面目だ。真剣にそう思っている。
「あ〜ほら、俺がいない世界とかつまんなくない?」
一瞬の間。きょとんと俺を見つめて、そして次の瞬間にはAは腹を抱えて笑っていた。
「あ、酷い。俺真剣なんですけど」
「お腹痛いです!ほんとやめてください、白濱さん面白すぎますよ、もう」
「ちょ、ちゃんと聞いてよ!俺真面目な話してんの!」
「はいはい、それで、世界の救世主白濱さんが?」
俺はまだ少し痛む傷にも構わず、むくりと身を起こした。涙が出るほど笑っていたAもさすがに慌てて俺のむき出しの肩に手を置く。
「あ、ちょっと、急に動いちゃ…」
「救世主は!」
その手を取って、Aの大きな瞳を覗き込む。
少しでもこの気持ちが伝わればいいと思って。この小さな手で守ってくれた俺の命の温もりが伝わってくれたらと思って。
「救世主は、Aちゃんの方だよ」
「…え?」
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かな - 続き楽しみです! (2020年10月10日 22時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこた | 作成日時:2020年9月17日 3時