アタシが苦手な野郎共 【∞】拾ノ壱

おしゃべりタイム ページ9

「去年はさぁ、制服着てる人いっぱいおったやん」

「おぉ、おったな」

「今年はなんかさ、お店とか出してるとこの服の人多ない？」

「あー、確かになぁ」

「横山くんとこ何やってるんやっけ」

「和装喫茶」

「和装すんの？」

「浴衣着て。なぁ」

「おぉ。めっちゃ動きづらいねんな」


うるせぇこっちだって同じだわ。

あと、お前大股で歩くから裾バサバサしてんだよ。

気づけ、大阪の商人(あきんど)。


「浴衣、浴衣……あっ、いた!! 可愛い人!!」

「ええなぁ、夏って感じするやん」

「やっぱ和服が似合う女やな」

「村上くんずっと言うてるもんな」

「着物似合う女がええねん」

「浴衣やけどな」

「帯引っ張ってあーれーとかやるんやろ」

「いつの時代？」


……うん、こっち見てる。

どこをどう見てもこっち見てる。

周り見ても居ねえもん、浴衣。


「え、お前？」みたいな顔して指ささないでくださいアタシだって困ってんだよ。

違う違うと首を振るも、周りに浴衣着てるやつなんていないしな。

過激派睨むな。もうめんどくせぇから。


「もう来月には秋やなぁ」

「受験シーズンやな」

「みんなもう進路決まってんのー？」


『決まってるー!!』

『まだー!!』


「あ、まだって人もおるんやぁ」

「うちのクラス、もう合格したって人おるからな」

「はやっ!! どこ行くん」

「専門とかはな、早いねんて」

「｢あぁ〜｣」


そういやいたな。夏休み終わった直後に「合格したー」って言ったの。

ウエディングとか、確かそっち方面の専門学校選んだとか……

うわ、今のうちから面談の練習考えんのめんどくせぇ……


「横山くんは大学行くん？」

「俺行くで」

「行けんの？」

「いっ……行けんのってどういう意味や大倉」

「いややってさぁ、英語の時間ムチャクチャって聞いたで」

「おま、誰から聞いたん」

「先輩」

「何を話してんねん!!」


言うな、言うな。

「なんかオモロいことないですかー」って聞いたから空耳アワーの話しただけだ。

アイツ、絶対留学できねぇよ。

ロシア住んでそうな顔してんのに。


「それ言うならさぁ、村上くんもなかなかって聞いたで？」

「あぁ、うん。ヒナはホンマにアカン」

「俺、俺さ、横山くんと村上くんとで伝言ゲームやってん。英会話で」

「うん、」

「海外の旅行とかでさ、使えそうなやつ俺探して、これ言うて見せて、横山くん、俺、村上くんの順番でやってん」


やめとけ錦戸。

余計に疲れるだけだ。

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