アタシが苦手な野郎共 【∞】拾ノ壱

バラード、のちしっとり ページ8

なんなんだ。

アップテンポの曲から、激しいロック。

メジャーなJPOP、バラード。


テンションおっつかねえわ。


あの、名前忘れたけど木製のギター。

弦のキュインって音が好きだ。


「……ありがとうございました。侍唄でした」

「この調子で、もう何曲かいきますんで。ゆったり楽しんでってください」

「寝るなよ!!」

「俺見て言うなって」

「ホンマやで。こないだ横山くんボンゴ持って寝てたやん」

「お前ここでその話持ち出す！？ しゃあないやんけ、扇風機めっちゃ気持ちよかってんから」

「それにしたってまぁー、アホ面やったな」

「なんやとビーバーみたいな顔しよって」

「ちょお、ケンカやめろよ!!」

「なぁ、いつ入ってええん？」


……錯覚だった。

なんだったんだ、さっきのいい男的な雰囲気は。

アレか。楽器持つと三割増でいい男に見える説か。

ケンカの内容小学生か。


「それでは、聴いてください。



Heavenly Psycho」



ものすごく、眠たくなるようなバラード。

好きな人に待っててもらえなくて、「もう愛してくれないから」ってワードがなんでか物凄い刺さる。



……決して、奴らの顔がいつもと違う表情だから。


とか、そんなんじゃねぇからな。




それから、


「今日も誰かが、巡り会う…」

「はるかぁあ、遥か、西の町……」

「恋をするなら、御堂筋から 始まるのさ……」


「雅なる、物語(ストーリー)……」


大阪の恋愛(を歌ったんだろうなって感じ)の曲だったり、


「それは君でした。愛しキミでした」

「心が求めていたもの全て」

「その微笑み、その優しさ」

「言葉にすればひとつしかない……」


海の底で燻っていた自分を、掬い出してくれたような愛のうただったり。


「手にしたものは少なくない」

「のに、いつも何かが足りない」

「そうやって同じように、一年前にも思ってたっけ」

「風に吹かれて僕ら、どこへ向かってるのかな？」

「形のない思いを抱いて、眠るよ」


いつもどこか、何か満たされない思いをそっと、吐き出すような、そんな歌だったり。



静かで、でも消えない。

そんな歌を、奴らは歌ってた。




「……ありがとうございます」

「ちょっと、小休憩入りますんでね。

皆さんもね、飲み物飲んだりしていただいて」

「今やったらトイレ空いてるよー!!」

「お化粧直ししてもええよー」

「なんかさぁ、今日色んな人おらん？」

「どゆこと？」


うん、どういうことだ錦戸。

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