清水さんちの朝 ページ22
朝起きると、彼はもうすでにいなかった。
台所の水切りかごには伏せられた切子がふたつ。酒瓶は指三本分ほど中身を残して、冷蔵庫と壁の間に隠れるようにして置かれていた。
ぶるりと寒気がして、厠に入った。
もそもそと朝食を食べながら、テレビを観る。ワイドショーでは何だかよく分からない話題が上がり、あーだこーだとコメンテーターが独自の見解を吐き出す。茶番だ。
天気予報観たいんだけどな、とそのまま見ているとコーナーに移った。お天気お姉さんの結野アナがにこやかに立ち、空模様をカメラに流す。
今日は江戸全域に渡り晴れだそうだ。所により曇りのち雨、お出かけの際は傘を忘れずに。
最近は花粉も飛んでいるので、洗濯物は室内干しにしましょう、とのこと。しまった、下着外に干してた。
ブラック星座占いの結果はまあまあだった。良くもなく悪くもなく。
結野アナのそれではまた来週、という締めの言葉を最後にテレビを消して、食器を片した。今日はセロリとほうれん草の餡掛けスープだった。
顔を洗うために洗面台に立ち、バンドで前髪を上げて眼鏡を外した。じゃばじゃば洗い、手拭いで拭く。最近では男性も肌に気を使うらしいが、気恥ずかしくてまだ洗顔料だけでしか洗ってない。
化粧水とかした方がいいんだろうか、と顔を揉んでいると、ぼんやりした薄橙に赤い点を見つけた。
なんだろうかと眼鏡をかけると、鎖骨に蚊に刺されたような痕があった。痒みはないが、気になる。
そっと首を見てみると、夥しい数の点が散らばっていた。感染症か? と疑いたくなるほどだ。
これはしばらく外出しない方がいいだろう。悪戯好きにも程がある。 何をしてくれてんだあの厨二病、と幼馴染に雑言を吐いた。
歯を磨いた後は、本業だ。
よくイメージとしては、缶詰になってああでもないこうでもないと書いては原稿用紙を丸めてその辺に捨てるという印象がありそうだが、清水はあまりない。
脳内でできている情景はあれど、それを表現する能力が見つからないときにうんうん唸ることはある。辞書を引き、外を眺め、たまには寝転んでみたりして降りるのだ。
清水の作風は多岐に渡る。推理小説を皮切りに、ホラーや読み切り、時代小説なんかも書いたことがある。唯一書いていないのは、恋愛と官能くらいか。
異性との絡みがない、というか経験がないためにそれだけは避けている。編集担当にも周知の事実だ。
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うす - 更新ありがとうございます…!この作品が大好きです応援してます! (9月19日 22時) (レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、! (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね!すごく楽しみにしてるので嬉しいです!無理のない範囲でこれからもお願いします! (4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです!次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月1日 15時