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今だけは、穏やかに酒を ページ20

高杉が持参したという酒は存外強く、一口飲めば酩酊状態になるような代物だ。元から酒に強い高杉や坂本ならば水のように飲み干してしまうのだろうが、清水にとっては猪口の半分を飲むまでが限界値だ。

月夜に酒とは風流だが、傍らに坐す男がテロリストでなければもう少し穏やかな心中で居られたかもしれない。彼はとはもう、幼馴染という括りに入らない。

片膝を立て、壁に寄りかかる様は色男だ。攘夷戦争時代も、遊女や花魁から袖を引かれていたと聞く。

時には遊女から逆指名され、一夜を過ごしたとも。坂本から聞いた話では「目ぇ血走らせて酒飲んで帰ってきたつまらない男」の烙印を押されたらしいが。真相は分からない。

切れ長の目に高い鼻筋、白磁の肌が月明かりに暴かれ一層際立つ。紫を帯びた黒髪も、隻眼の包帯も、どれをとっても危険そのものだというのに。なぜ自分は並んで酒を飲んでいるのだろう。

猪口に口をつけ、ぐいっと飲み干した。カッと血の巡りが早くなり、寝起きの頭が酸欠でも起こしたようにくらくらする。脈拍が速い、顔が熱い、呼吸が深くなる。

ずる、と壁に寄りかかって天井を仰いだ。水でも持ってくればよかったかもしれない。梅干しはあっただろうか。

す、と高杉が立ち上がる気配がした。帰るのだろうか。一杯だけとは言っていなかったが、彼にとってはこれで終わりなのだろう。

嗚呼、横たわりたい。寝ていいかな。いいよね。

こてん、と右半身がゴザに伏せた。90度反転した世界は妙ちきりんに見える。

少し、足を伸ばすと何かに当たった。かしゃん、と金属の音がする。


「何やってんだ、テメェは」

「……かえんなかったの」

「おら、食え」

「むぐっ……ん、すっぱ!」

「冷蔵庫にあったぞ。もう一粒くらいは食えんだろ」

「ま、ちょ……たね、たねっ」

「ここでいいから、吐き出せ」

「ぷっ」


高杉の手のひらに種を吐き出し、もうひとつ梅干しを口に含む。今度は種ごと果肉を噛まなくてよさそうだ。そういえば、紀伊国の出張土産とかで貰ったのを思い出した。白米と食べたが、めちゃくちゃ酸っぱかった。塩の粒が浮いていた気がする。

もう一度種を吐き出すと、今度は湯のみが置かれた。起き上がって飲むと、白湯だった。少し砂糖が入っている。


「まだ飲むか」

「うん」

「待ってろ」


すっくと立ち、また何やらかちゃかちゃやって戻ってきた。なんで当然のように間取りを把握しているのだろうか。

くぴくぴと飲みながら首を傾げた。

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うす - 更新ありがとうございます…!この作品が大好きです応援してます! (9月19日 22時) (レス) @page50 id: d6b5e366a4 (このIDを非表示/違反報告)
oyz031(プロフ) - とても面白く、興味深いお話で続きが気になります。応援しています (8月30日 0時) (レス) @page49 id: 7ddb3de917 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - いつまでも更新お待ちしております、! (5月21日 18時) (レス) id: c35eeb83bd (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 最近めちゃくちゃ更新されてますね!すごく楽しみにしてるので嬉しいです!無理のない範囲でこれからもお願いします! (2023年4月22日 20時) (レス) id: 19052b8914 (このIDを非表示/違反報告)
モブ - ものすごくこの小説が大好きです!次の話に進むたびドキドキしてしまいます...!!! (2023年3月24日 2時) (レス) id: 24c7afdf4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:pillow | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年3月1日 15時

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