湯上り大前姉妹 ページ10
風呂から上がり、いつの間にか用意されていた新しい着物にふと笑みが零れる。
襦袢、白地に沙羅双樹が咲く浴衣。少し肌寒い夜だが、重ね着をすれば問題はなさそうだ。
妹たちも、用意された着物に目を輝かせている。総じて赤や薄紅色の系統があるのは、万事屋の紅一点の趣味だろうか。
着させてと甘える妹たちに、丁寧に帯を締めた。しばらく見ないうちに、背が伸びただろうか。
齢13の沙苗は小学生の頃に一気に成長期が来るタイプで、Aよりも若干低めの背丈である。なのに、やけに大きく見えたのはしばらく顔を見ていないせいなのか。短い髪も、首まで伸びている。
湯気で曇った眼鏡を掛けた三女の美菜は、ちょっと眠そうだ。もう9歳だと本人は言うが、風呂では気持ちよさげに頭を洗われていた。Aからすればまだ9歳である。
こくり、こくりと船を漕いでいるのは末妹の沙代だ。風呂の温かさと、姉に会えた安心と疲れが一気に来たのだろう。湯船に沈まないかと冷や冷やしていたが、もう寝ないもんと得意げだった。姉の腕に抱かれているあどけない夢の世界一歩手前の表情は、可愛い6歳のものだ。寝なさい。
暖簾を潜り、夕方の冷たい風が熱を拐う。火照った頬を濡らした手拭いで押さえて、次女の沙苗が言う。
「姉ちゃん、ご飯食べてる?」
「ん? 食べてるよ、なんで?」
「細くなったよ」
「えぇ、そう? 痩せたかな」
「おばちゃん言ってたよ。姉ちゃん、もっと食べた方がいいって。成長期なのに、食べなさすぎだって」
「うーん……そういう訳じゃないんだけどな…」
食は細い方ではない。むしろ食べる方だ。だが、成長期の最中にいる弟らと自分を天秤に掛ければ、比重が大きいのは弟らに違いない。肉、魚、野菜などいっぱい食べろと勧めるあまり、自然と食べる量が少なくなったのかもしれない。
ダイエットできた、と喜べばいいのか。それとも筋肉が減ったと嘆くべきなのか。
「女の子はね、ちょっとくらいふっくらした方がいいっておばちゃん言ってたよ」
「沙苗、そういうの気にしたことあったっけ」
「姉ちゃんみたいにきれいな女の人になりたいもん。強くて、かっこよくて優しい人になりたいの」
「……好きな人でもできた?」
「ち、違うよ!!」
「えぇ〜? 怪しいー」
「姉ちゃん!!」
「んふっ」
顔を真っ赤にしているのは、湯上りだからではないだろう。小さく非難の声を上げる次女の頭を撫でてやり、向こう側から来る万事屋一行を認めて手を振った。
お風呂上がりって猛烈に眠たくなるよね。アレコタツでも同じことが言える→←強面に囲まれたらチンピラだって警察だって怖い
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時