有給休暇消化率10%には気をつけろ ページ50
あまりにも働きすぎなため、有給が溜まり過ぎているとお登勢は愚痴る。休暇ついでに消化しな、と煙草を吹かした。病人いるんだけどな。
スナックは暖簾をしまったらしい。一日くらい開けなくたって、勝手に酒飲んで帰ってく野郎はいるとのこと。ただし、厨房の主謹製のフードメニューは好評なので、それが無いと嫌だとごねる客はいるという。
「そこの腐れ天パなんて、アンタの飯に惚れた一人さ」
「あ゙ァ!? テキトーなこと抜かしてんじゃねぇよババア!!」
「テメーこの間肉ほとんど食っただろーが!! 調子乗ってツケやがって、家賃と一緒に返してもらうからね!!」
「んだとババア!! ちゃんと払っただろうが!!」
「230円じゃ酒の足しにもならねーんだよ!! ジャンプと勘違いしてんじゃねーぞゴラァ!!」
まさかそんな、と思ったが粥を手にした二階の家主の耳が赤い。
確かに、一時仕入れたブロック肉を消費しようとスペアリブだのくったくたの煮込みだの作ったが、それがあっという間に無くなった。
よもや彼だと思うまい。大体、あああう味の濃いラインナップは酒を飲んだ後に飲むもので、ある程度腹が膨れた後の摘みのようなものだ。
もしかして夕飯代わりにされた? いや残らなかったから嬉しかったけれど。
「アレとか美味かったね。大根と肉と、卵煮込んだやつ」
「ああ、あれご飯にタレかけて卵割るといいですよ」
「おや、いいね。賄いはそれにしようか」
「オ登勢サン、私ソンナ貧乏臭イノ食ベマセン。ドウセナラ肉ニ出汁カケタオ茶漬ケガイイト思イマース」
「テメーで作れ。茶漬けか、いいね」
「歯ガ脆イオ登勢サンデモ食ベラレマスヨ」
「誰の歯が入れ歯だ!! 私の歯はいつも健康的って医者から言われてんだよ!!」
「んなスパスパ煙草吸ってたら抜けんのも時間の問題だな。今のうちにポリグリップ買っとけよ」
「けっ、一生使わないよ」
「おら、食え。ネギとか高級なモンウチにねーからな。文句言うなよ」
「いや、言いませんよ。いただきます」
とは言いつつ、万事屋の冷蔵庫でもかなり上等な部類に入る卵が鍋で泳いでいるのは、病人(仮)の自分への健康を慮ってのことだろう。
出汁の香りが漂うそれに手を合わせ、レンゲで粥を掬った。ふう、ふう、と冷まして口に流し込む。
まだ熱かったが、程よい塩味と鰹出汁が優しく広がる。思わず顔が綻んだ。
「ぉいひ、れふ」
「おー、そうか」
「じゃ、私らは行くさね。いいって言うまで、厨房入んじゃないよ」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時