懐かしむ駿河の過去 ページ44
「成程。『玄楽郷』は一斉に叩かれたと、そういうことか」
「あァ、らしいぜ」
「まさか駿河にまで足を伸ばしていたとは……江戸近辺と見誤っていたか」
団子屋の長椅子に座り、みたらし団子をもちゃもちゃと食べる銀髪頭と茶を飲む黒髪ロン毛の男。事態の終息を感じ取り、何があった詳しく話せと押し寄せたのだ。団子はその情報料。
「しかし、駿河か……懐かしいな、かつて食糧の補給で赴いたことがあっただろう。覚えているか」
「さァな。俺ァ途中でおめーらと離れたし」
「よもや、お前が用を足す途中に足を滑らせて崖から落ちるとは思うまい。悲鳴は聞こえど、お前はその程度で死ぬような男ではないと皆で放置して行くことにしたのだ」
「やっぱ探さなかったんじゃねーか!! あの後どうなったと思ってんだ!! 腕折ったんだぞあの痛みが分かんのか!!」
「そういえば、その時にどこぞの道場で手当を受けたと言っていたな。何やら、幼子に連れられたとか」
「あぁ? あー……」
長期化する戦争では、武器は勿論だが食糧も必要になる。攘夷軍は少数であったが大の男たちが集う軍でもあったため、食糧調達は欠かせない事項の一つであった。
その道中、駿河のある山にて目的地まで歩いていたところ、銀時が用を足すといって編成された隊から一旦外れたのだ。桂は引き止めたが、すでに袴の紐を解いていた銀時は聞く耳を持たなかった。
用を済ませ、さて戻ろうとしたところで足を滑らせ落下。丁度、そこは土砂崩れにより足場が不安定な場所で、ろくに整備されていなかったためすぐに崩れたのだ。
頭を打ち、気を失ったところを近所の子どもが見つけておやつと水を分け与えてくれた。朗らかな笑顔の、可愛らしい女児だったと思う。
「近くの道場主の娘だとか言っていなかったか」
「あ? あー……だっけ、」
「あの後、食糧を確保して戻る最中で合流しただろう。その時に、手を引かれていたのを覚えている」
「もうさっぱり覚えてねーわ。似たようなこと結構あったしよぉ」
「なるほど、はぐれる度に頭を打てば記憶は消えよう。都合の悪い記憶だけは残るものだな」
「別に毎回頭打った訳じゃねぇよ」
そこで、はたと気づく。前にも似たような話がなかっただろうか。
いつだ、あれは確か真選組とかち合った日だ。
この隣の電波バカとパチスロ屋で会って、御用改めに巻き込まれた……
「あいつかよ!!」
「なんだ、新台でも思い出したか」
「大福くれたの、あいつだったわ……」
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時