知らず知らずに子は育つ ページ30
暫しして、Aが戻ってきた。要請されたのは三女の美菜を聴取していた隊士だったらしい。
突如として何も喋らなくなり、反応すら返ってこず慌ててコールしたのだという。
取り調べ室となっていた大部屋に向かい、美菜の様子を見て確信した。机を挟んでいた隊士の目から分からなかったが、少しばかり小刻みに手が震えていた。当時のことを思い出し、怖かったのだろう。まだ9歳の美菜には少々きつかったかもしれない。手を握り、優しく背を摩ると、ぽつぽつと聞かれたことに対して返事をしてくれた。
必要な聴取分は聞けたとのことで、緊張が解けた美菜は首にしがみついた。お疲れ様の意味を込めて、二粒の金平糖をあげると顔を綻ばせて口に放り込んだ。地元での味は記憶に残るらしい。
まだ聴取を終えていない姉弟たちのもとへ向かおうと思ったが、美菜が妹の沙代のもとへ行くというのでそれまで付き添った。終わったら、町へ遊びに行こうと指切りをした。
じゃあ後で、と別れて戻ってきた次第だった。
「へぇ、じゃあその、美菜ちゃんがAさんの代わりに付き添う形になったんですね?」
「はい。もう甘えんぼじゃなくなったんだなと思うと、ちょっと……」
「ガキっつーのは知らねぇうちに勝手に育ってくモンよ。アレだよ、河川敷に捨てられてる成人雑誌とか読み始めるからねそのうち」
「それ銀さんだけじゃないですか。そんな爛れた幼少期過ごす訳ないでしょ」
「いやいや、ああいう堅実っぽい生活してる子ほどそーいうのに興味持ちたがんだよ。すげーよ? 今の小学生は」
「銀時さん、うち河川敷ないです。周り田んぼです」
「あ、じゃあ田んぼに捨てられてた成人雑誌だな。意外と掘り出しもんあんだぞ、ああいうとこには」
「少なくともないです。あったらお百姓さんに地獄の果てまで追いかけられます」
「……治安良さそーね、おたく」
「攘夷浪士に踏み荒らされましたけどね」
「美菜も沙代も沙苗も、銀ちゃんみたいにドロドロに溶けた脳みそしてないアル。泥だらけの大人になんてなりたくないヨ」
「泥だらけの大人に住まわせろっつったの誰だコラ」
「A、町出るときに私の友達も紹介するアル!! そんで、カブトバトルするアルヨ」
「今の時期ってカブトムシいるのかな……」
「いや居ないでしょ。さすがに」
そうして縁側で茶を飲み、通りすがりの山崎にもっと歌詞をよこせとせがんだり、聴取が早く終わった弟や妹らが集まり、賑やかな午前を過ごした。
お出かけの姉妹、稽古する兄弟→←教室の窓側の席になると途端に先生から怒られやすくなるよね
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!もし決まってましたら、大前兄妹の年齢を教えていただけないでしょうか? (2021年2月24日 15時) (レス) id: 5b2ad52f60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月23日 17時