一寸先は鷹の嘴【銀魂】 (ページ9)

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かつての同門ページ9

剣の扱いは素人以下で、銀時はおろか桂や高杉から一本も取ることができなかった。

近いところが見えないのだと、話してくれた。

父親と後妻による暴力で視界が不安定になってしまい、遠視になったのだという。

だから、接近戦は難しいと。みな剣を振るうが、自分は思うようにピントが合わず一本も取れないと悩んでいた。

そこで、松陽は遠くを狙い打つことができる弓矢を勧めた。これなら君にできるのではないか、と。

才能はそこで開花した。銀時が適当に付けた印を百発百中で捕らえてみせ、桂が不用意に動かす紐を打ち留め、高杉が走り回るのを木の枝から確認してその手に握られていた木の実を打ち抜いた。

こうした狙撃の才には恵まれたものの、日常生活にはかなりの支障をきたしていた。

ピントの調節に時間がかかり、人よりも字を書くのが遅かったり。

本を読むのにわざわざ目を細め、行を飛ばしてしまったり。

些末なことではあるが、あの頃はかなり苦労したのだと見える。

そこで出てくるのが高杉だ。

何やら庇護欲を刺激されたのか、はたまた違う感情が芽生えたのか。当時だとかなり高級品に分類されていた眼鏡をどこからか調達し、清水に贈ったという。

当然、清水はお返しが大変だからと突っぱねたが、「普段の生活に支障が出るんじゃ仕方ねぇだろ。掛けてろ老眼が」と憎まれ口を叩いて渡したという。

これだけに飽き足らず、今度は「身なりくらいちゃんとしろ」と伸びっぱなしだった髪を整えて櫛を贈った。

「古いもんだからやる」とお下がりを押し付けたように見えたが、手触りがよいそれは乳白色に淡い紫色の桔梗が繊細にあしらわれており、清水は嬉しいとそれを受け取った。

こうした贈り物を、何かと理由をつけては「やる」と押し付けた高杉は、今で言うツンデレの域に達していたのかもしれない。

雛鳥にエサやる親鳥かよ、と銀時は思っていたが、その執着は親愛よりも厄介なものだと気づいていた。

これに関しては桂も同様で、特に攘夷戦争では男所帯で高杉自身も鬼兵隊を率いていたために清水のそばを離れることが多く、やきもきしていたのを察知している。

普段何も考えてなさそうな桂浜の龍こと坂本辰馬も、高杉の異様な執着ぶりは把握していたらしい。なんでも狙撃部隊のことで話を聞いていたところ、どこからか柄部分にヤクルコが入ったビニールを引っ掛けて背中目掛けて刀をブン投げられたことがあるのだとか。

あの瞬間だけは、死を覚悟したという。