一寸先は鷹の嘴【銀魂】 (ページ25)

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攘夷を生きた男どもページ25

「クソっ、ここにもいねぇ」

部屋という部屋は全て探したが、どこにも新八と神楽の姿は見当たらない。

それどころか、親玉である鶴森と小沢、攘夷党の頭の姿も無かった。

わらわらと蟻のように湧き出る浪士を木刀で仕留め、まだ意識のある一人を蹴りつけた。

「オイ、ウチのガキどうした」

「が、ガキは向こうにいるので……」

「新八と神楽はどこだ!!!」

濃紅の双眸に睨まれ、全身に釘打たれたかのように身体が動かない。

これがあの白夜叉か。攘夷戦争で、英雄と讃えられた鬼か。

言い知れぬ恐怖と、修羅の如く強さを目の当たりにし極寒の地獄を味わうように震えた。

鶴森と頭が、上に連れていったと。秘匿にしていたそれを口にしたとき、今にも自身を斬り捨てようとする恐ろしさの前に平伏した。

上には屋根しかないように見えるが、実は幕府の官僚のみが使用できるヘリコプターがあると。

屋根は開閉式になっており、鶴森が見初めた子ども達はそれに乗せるのだと話した。

「ヘリはもう飛んだのか!!」

「ま、まだのはずだ。屋根の開閉はでけぇ音が響くから、それが聞こえないはずはねぇ」

「チッ」

自分の腹を踏みつけていた足が退かれ、今度は首を掴まれ屋根に繋がるのはどこだと引きずられた。

隠し階段がある、と数少ない人間しか知らない出入口への鍵を開けた。

手入力式のパスコードを打ち込み、がこんと仰々しい音を立てて隠し階段が降ろされた。

用済みと言わんばかりに投げ捨てられ、ほっと息を呑む。

ひゅうひゅうと呼吸を繰り返し、隠し階段を閉じるためのパスコードを打ち込む。これで、もし降りようとしても封鎖されてはここへは来られまい。

飛び降りようとも、高さはビル三階分ある。間違いなく骨折だけでは済まされない。

あばよ白夜叉。ガキも連れ戻せず、帰ることもできず。極楽浄土で暴れやがれ。

小心者で姑息な男は、隠し階段収納実行のボタンに指を置かんとした。

刹那、

「！？っが、」

どこからか飛んできた弓矢がパスコードを打ち込む電子版を直撃し、それは木っ端微塵に割れた。

弓矢は鋭角で刺さり、一突きで操作権を剥奪した。

一体どこから、と振り向けば、陽が差し込むようにと備え付けられた長方形の硝子。

その一枚に、ほんの僅かな通り穴が開いていた。

「馬鹿な……」

硝子越しの月明かり。

妖しく眩い光りが照らした、勝色の髪に鶯色の着流し。

屋根に立つ男は、鈍色の鉤爪を真っ直ぐに構えていた。