スナックお登勢の新人さん【坂田銀時】

心ここに在らず ページ46

「ちゃんと頂いたよ。修理費に、誤魔化してた先々月分の家賃」


紙幣を数えるお登勢と、そっぽを向いて不貞腐れる銀時。くちゃくちゃと酢昆布を噛む神楽に、申し訳なさそうに肩を竦める新八。どうやら、家賃は払えるようになっていたものの社長がパチスロに行きかけていたらしい。

新八と神楽が押さえていたところをAが突撃したため、パチスロでスって帰ることも生活費がおじゃんになることもなかった。


「大体なんだよ、家賃払わねーくれぇで大袈裟な」

「真っ当な人間は毎月家賃と給料収めるもんなんだよ。このダメ人間が」

「あのままAさんが来なかったら、明日の卵かけご飯もどうなっていたか……」

「卵かけご飯専用の醤油が欲しいって言ったら、銀ちゃんパチンコ行って倍にしてくるとか抜かしたアル」

「あんなたっけーの買う金ねぇの。だから倍にしようとしたの」

「大勝ちしたこともねーくせに開き直んな!!」


やれやれ、とスツールに腰掛ける新八は、ボックス席でレシートの仕分けをしているAに気づいた。

とっくにレシートは振り分けられているのに、まとめられたレシートを数えてはテーブルに置き、数えてはテーブルに置きを繰り返している。

どうしたんだろう、と首を傾げると「最近ああなのさ」とお登勢は言う。


「この間、家族に布団買ってやるとか言ってただろう？ 手紙と一緒に送ったらしいんだけど、めっきり連絡がつかなくなっちまったらしくてねぇ」

「んなホームシックじゃあるめぇし。向こうで家族も布団にはしゃいで忘れてんだろ」

「そうかい。姉ちゃん大好きな兄弟がひと月も手紙寄越さないかい」

「ひと月？」

「駿河と江戸って、そんなに荷物届くの遅かったんですっけ」

「な訳あるかい。遅くても3日後には着くようになってるさ。ちゃんと届いたって業者からも確認が取れたそうだ」

「おいおい、ネコババされたんじゃねぇだろうな」

「誰ガネコババーダコノ腐レ天パ!!」

「てめーじゃねーよ!! ネコついたら自分のことだと思うなよ、この自意識過剰!!」

「またいっぱいお手紙書いて、ぎゅうぎゅうに封筒に詰めてるんじゃないですか？」

「だといいんだけどね。前回返事が届いたのが早かったもんだから、心配なのかもねぇ」


と、そこへ郵便のバイク音が聞こえた。

弾き飛ばされたようにレシートを置き、配達のお兄さんから葉書やら何やらを受け取り、必要分はお登勢に渡した。その手に残ったのは、白い封筒のみ。


「来た……」

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