スナックお登勢の新人さん【坂田銀時】

新人の子ってなんか響きがいいよね ページ3

恐る恐るといったように差し込む第三者の問いかけは掻き消え、さらに喧騒はヒートアップする。

女帝は白髪にジャーマンスープレックスを仕掛け、猫耳の先輩は何やら可愛らしい女の子と掴み合い、機械仕掛けの看板娘は沈静化させようとしているのか煽り立てようとしているのかモップを振り回し、眼鏡をかけた青年は器を持ってテーブル席に避難していた。

カオスしか言いようがないその光景に釘付けになりつつ、はっとしてバックヤードに駆け込んだ。

自分の城になりつつある台所から中華鍋とお玉を取り出し、再び店に戻る。

喧嘩はさせておくべきかもしれないが、このままだと確実に破壊行動が進化する。というより、カウンターが半壊している。


意を決し、お玉と中華鍋をぶつけてがぁんと鳴らした。


鐘のようなそれに一同気が付き、複数の双眼がこちらを向く。
とりあえず、喧嘩は収まったようでほっとした。


「……おはよう、ございます」


へらり、と笑った顔は歪んでいなかっただろうか。

こうして複数の人達に注目されるのは弟や妹達で慣れているが、初対面の人となると話は別である。

今も、少し怖い。


「おや、いたのかい。

紹介するよ、コイツが新人だ」


ぺこりと頭を下げ、「大前Aと申します」と紹介した声はやや震えていた。

白髪の男に眼鏡の少年、可愛らしい顔立ちだが口周りの米粒が目立つ女の子。もしやと思うが、上の階に住まう『よろずや』なる店の人達だろうか。




銀時の目は相変わらず死んでいたが、スナックの新顔は彼にとって珍しいものとして映った。

くすんだ葡萄色の袴にやや褪せた紺色の着物。色合いとしては地味だが、天人の介入によってやたら派手派手しくなった江戸界隈では落ち着いた雰囲気である。

歳は新八と同じくらいだろうか。整った顔立ちは少女から女性へ羽化している最中のようで、垢抜けていないところは田舎特有か。染めていない黒髪や化粧を施していない肌が野暮ったく見えた。

江戸、特にかぶき町近辺は所謂夜の街が多く、ネオンをはじめ様々なものが輝かしく見える。店で働く人間然り、街頭然り、シャンパンタワー然り、ドンペリ然り。金払いが全てのシビアな世界だからこそ、目に優しくない街ができているのだと銀時は思う。

見たところ未成年で、しかも何も知らない田舎出身。風俗店やキャバクラが蔓延るこの街では格好の獲物だ。それをお登勢が拾ったとなると、強力な後ろ盾ができたということになる。

考えたな、ババア。

はじめまして、大前です。→←田舎出身とは言いつつ若干都会寄りのところ出身ですってつい言っちゃうよね

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