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しゅん、と眉を下げて残念そうにこちらを見てくる山本さん。
いや、あの…そういう目は弱いんです…。やめてください。
「いや、その、いやと言いますか…。…そう!仕事もありますし!」
「まぁ、A社長秘書してるからなぁ。」
「そ、そうなんです!実はこう見えても!」
ナイスアシスト!駿貴!やっぱりいい男だ!ナイスガイ!できる男!出来が違う!
心の中で褒めちぎっていると矢継ぎ早に伊沢さんと福良さんが質問をしてきた。
「やっぱり社長秘書をされてるとスケジュール管理とか上手なんですよね?…いいな〜、俺も欲しい〜。」
「い、いや。そこまでですよ?アポの調整なんて簡単ですし…。」
「でも、Aさんがスケジュールしてくれると他の方は別のお仕事集中できるんですよね?」
「それはそうですけど…、福良さんはその辺りお上手だと思ってます…」
「それでも先方に失礼なくお仕事に繋げることもありますよね?」
「そ、それは、私の仕事ですし…。」
雲行きが怪しいなんてものじゃない。真っ黒だ。私の頭の上の空は真っ黒だ。よくない。この流れは本当に良くない。さっきから質問攻めにされている私を駿貴はニヤニヤ見ているし、マスターはタバコを吸い始めた。…理詰にされている。確実にじわじわと逃げ場がなくなっているのを感じる。
もう、こうなれば半ば諦めてきた。抵抗も虚しくなるだけだ。
残された私にできる最後の抵抗をするくらいいいだろう。
「でも、やるからにはやっぱり面白い企画とかも必要ですし!それにここに顔を出せるのも限られてますし!」
「そのために今日僕たち須貝さんに呼ばれたんですよ。」
「え。」
優しく伊沢さんに微笑みかけられる。
わぁ、かっこいいですね。年下なのにドキッとしちゃった。
いや、そう言われても。どういうこと?疑問符が頭の中を占める前に駿貴が私に補足をした。
「Aも無理なく。かつ、ここのPRになるような企画を考えるために俺が伊沢くんたち連れてきたのよ。」
「俺が駿貴に無理を言ったのよ。」
「駿貴さん流石っす!」
どこからともなくゴングの鐘が鳴った…気がした。
もうこの席に座った瞬間に私の敗北は決まっていたのだ。
「さぁ、諦めてくれ。」
ニヤリと笑うマスターに向かって、項べを垂れた私は黙って空になったグラスを差しお代わりの意思を示すと駿貴が大きな声で笑った。
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作者名:未果子 | 作成日時:2020年12月25日 1時