【QK】女王はバーで溺れる (ページ13)

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「このバーでYouTube始めるって話になってさ…。」

「うん？」

「Aも客だけど、おっさんばっかの絵面より華がいてくれた方がいいってことで！
　Aに言えば出てくれるって。言ってくれただろ！」

歯切れの悪い駿貴の代わりにマスターが後の説明をする。内容が内容なだけに言いづらかったのだろう。…そりゃ言い淀むわ。
しかし、記憶のない私にそんなことを言われても困るのだ。よし、ここから聞いてなかったことにしてどうにかその活動からは外してもらおう。私には荷が重すぎる。

「あ、逃げれると思うなよ？」

「そんなぁ～、逃げるだなんて人聞きの悪い…。」

「A。目が泳いでる。」

「しゅ、駿貴ってば…！」

「まぁ、これ見て観念しろ。」

「え？」

マスターが突き出してきたスマホの画面にはそれはそれは楽しそうな私と例のジェームズ。つまりは、先週の映像ということだ。
悪夢を見せられている気分でしかないが、見せるということは意味があるのだろう。

『はい～、A～、何杯目だ～？』

『んふふ～、４？だと思う～。』

『はい、須貝さんが数えてたのではそれは６杯目ですよ～。』

そして、カメラの位置と声のの主から撮影者は駿貴。なんでこんなとこ撮ってんの？

『で、さっき言ってたマスターの店のYouTube出てくれるんですね。Aさんは～？』

『はい～、いい歳ですけど、アイドル枠で出ます～』

『じゃあ、投稿されるの楽しみにしてまーす。』

ここで動画は終わり。
どんどん顔が青ざめていくのがわかる。待て。言質取ったってことですよね？え？撮影者は駿貴なら共犯じゃん。いやいや！待て待て！

「な？」

「待った！そんなんあかんわ！」

「A出るの楽しみにしてるんだぜ？俺？」

「駿貴は一回黙っときー！」

こんなことがあってたまるか！
そう、私は酔っていたのだ。それも記憶をなくすほどには。久しぶりに潰れた代償がこれとはあまりに大きすぎる。
そう、酔っていたのだ。心神喪失状態じゃないか。

「心神喪失状態の為、この映像は証拠にならないことを主張します！」

「誰か弁護人は？」

「しゅ…駿貴が…！」

「俺はマスター側に着くことになってまーす。」

「よし、おごってやるからな。」

「買収されてる！」

駿貴は買収されてるし、トシは元々論外。味方いないこの状況。勝てるわけがない。
いや、どうにかして勝たなくては…！負けられない！

「…そんなに嫌なんですか？」

よくない流れだ。