【魔主役】鏡使いの悪魔学校生活:VOL.16【魔入間】

第734話🦇新魔術 ページ18

*チーノ side*

自分の目の前に1枚だけ鏡を出したかと思うと、ミラさんはおもむろにこんなことを言ってきた。

「チーノ先輩。さっき使ったペイントスライム、まだ余ってます？」

「えッ？ い、一応ありますけど……結構使っちゃったんで、もうそんなに数無いですよ？」

「あぁ、大丈夫ですよ。1個ありゃ充分なんで」

余裕ありげにそう言い、彼女は俺が差し出したペイントスライムを1つだけ手に取った。

そしてそのペイントスライムは、彼女の手によって例の鏡めがけ思いっきりぶん投げられる。

当然のように鏡の中へ消えていったペイントスライムに唖然とした、その次の瞬間―――校舎中から、一斉に叫び声のようなものが聞こえてきた。

「うわッ!? なッ、何事……!?」

「んっふっふ……上手くいったみたいですね、アタシの新魔術」

「し、新魔術……？？」

今の一瞬で何が起こったのか微塵(みじん)もわからない俺に、ミラさんは説明する。

「実は、この1枚を出すと同時に校舎中に大量の鏡(ミラー)を出現させておいたんです。その鏡(ミラー)たちとこの1枚の鏡(ミラー)は、ちょっと特殊な繋がり方をしてまして……この鏡(ミラー)を通り抜けたモノは、学園中にある鏡(ミラー)から同時に(・・・)飛び出すんですわ」

「ど、同時に……？ えッ？ でも、鏡はたくさんあってもペイントスライムは1つで……」

「そう、そこです。簡単に言うと、モノを分身させる(・・・・・・・・)魔術なんですよ」

「えぇッ……!?!?」

つ、つまり…元々1つであるはずのペイントスライムが、ミラさんが生み出した鏡を通ったことで増えた……!?

「名付けて、〖分身鏡(ドッペルミラー)〗！！ シチロウ先生と試行錯誤しながら編み出した、アタシの新技でっせ♪」

てことは…さっきの叫び声は、ミラさんの投げたペイントスライムの餌食(えじき)となった無数の悪魔たちの声……。

「すっっ…げぇ……！！」

思わず素の感じで驚きの声を漏らしてしまう俺を、ミラさんは満足気に見ていた。

「んっふふふ、驚いた？ 驚いたでしょ！」

その無邪気な様子がかわいらしくて、俺は自然と頬を緩ませてしまうのだった。

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