・ ページ15
.
「なぁAちゃん？体育祭、結局轟くんは優勝できんかったけど、それから進展はなかったの？」
八百万さんのお家を出て帰路に着く。
途中の駅まではみんな一緒だったけど徐々に分かれていって、同じ電車に乗ってるのはもうお茶子ちゃんとわたしだけ。
人の少ない車両に並んで座ったわたしたちの話し声が僅かに響く。
「体育祭終わって、個性のことも吹っ切れて、轟くん、めっちゃ積極的になった気がするんよ！」
『爆豪くんとの試合は心ここに在らずだった割に、その後話したら結構悔しそうにしてて。
なんか可哀想だったから、放課後なら出かけてもいいよって言った』
「え！それって制服デートってやつやん！」
『……恋愛感情とは違うと思うけど、轟くんの悲しそうな顔見るとすごい罪悪感あるんだよね』
体育祭の数日後、まだどことなく浮ついた空気が漂っていた頃。
わたしと轟くんは一緒に教室を出て、お互いの家とは反対方向の電車に乗ってお出かけをした。
どこ行ったん？目を輝かせてこちらを見つめるお茶子ちゃんに負けないようにわたしも微笑んだ。
『海』
「へ？」
『海を見に行ったんだ、ふたりで』
わたしたちは、ほとんど行き当たりばったりで電車に揺られ、海を見た。
暖かくなってきたとはいえまだ5月。
砂浜に鞄とローファー、ブレザーを残してふたりで歩いた海岸はなんとなく冷たくて、でもそれが変に高ぶる気持ちを隠してくれているようで少し安心していて。
轟くんのおめでたい紅白の髪は、海の青さにも負けないくらい綺麗だった。
『轟くんの話たくさん聞いて、わたしの話もして、もう我慢しないって言われた。
轟くんの相談相手って飯田くんか緑谷くんだから結構的外れなアピールされてるんだけど、それでも毎朝律儀に挨拶されたりあの顔で微笑まれたりしたらまあしんどいよね』
「……Aちゃんって、結構メンクイ？」
『人間みんなメンクイだよ』
緑谷くんだって別にブスじゃないでしょ。
言うとお茶子ちゃんはアワアワと顔の前で手を揺らす。
「ほ、ほんとにデクくんとはそんなんやないんだってば！」
『そんなんってなぁに？』
きっとわたしの頬は緩みっぱなしだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 831人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有紀(プロフ) - 華蓮さん» ありがとうございます！ぜひお気軽にフォロリクしてあげてくださいませ◎ (2020年2月21日 20時) (
レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - めっちゃ好きです！ちょー面白いです！ツイッター、ぜひ私も繋がらせてください！ (2020年2月17日 23時) (レス) id: 8e99dba7a3 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - プルスウルトラさん» ありがとうございます！オチが見えてないので当分は書き続けそうです笑 (2020年2月17日 20時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
プルスウルトラ - 凄い好きです、尊すぎて死にそうなくらいです、ずっと書いてて欲しいくらいです！ホント大好きです！頑張って下さい！ (2020年2月13日 22時) (レス) id: 387ceeb55f (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - まじま。さん» だれも構ってくれなくても作ろうと思っていたので暖かいお言葉がいただけて光栄です！最新ページをこそっと書き換えたので気が向いたらフォローしてやってください！ (2020年2月6日 0時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：有紀 | 作成日時：2020年1月23日 15時
