ブラザーズ・コンプレックス【完】

罰 ページ32

宿泊所の廊下。

幸いにも今は私達の姿しかない。


　


TH「泣かないでよ。俺も悲しくなる。」

『なんで…。』

TH「あのねぇ、恋ってそういうものなの。
好きな人が悲しんでたら、悲しいよ？」

『それは…わかります。』



顔を手で覆いながら、ちらっとテヒョン君を見てみると、本当に彼も泣きそうな顔をしていた。


　
『でも、

今は悲しいっていうか…』

TH「違うの？」

『ちょっと複雑です…。』


　
そうなの？と首を傾げるテヒョン君。

だけどすぐに、その大きな瞳をぱちっと見開く。

　

TH「A、ちょっとあっちいこ！」

『なんでですか？』

TH「いいから！」


　
ぐいぐいと手を引くテヒョン君を不審に思って振り向くと…






　









『あ…』







　









視線の先には、何やら揉めてる様子のホソク君とソナさんの姿。

いつもにこにこ優しいソナさんが、珍しく怒ってるように見える。

それを宥めるような仕草を見せるホソク君に…ソナさんは少しだけ背伸びをして…



　





　






『…っ』






　








ああ、これはきっと罰だ。




　









『テヒョン君…

私、平気だよ？』

TH「…、

うそつき。」



　
私の視線を隠すように覆われたテヒョン君の手のひら。

でも、ごめんね。

見えちゃったんだ。

重なった…2人の唇。



せっかくテヒョン君が気遣ってくれたのに。




　





でも、自業自得だよ。

嫌で嫌でたまらなかった妹っていう立場を利用して、ソナさんのものになったホソク君を、思い続けた罰。




　




TH「いこ。」

『テヒョン君、ほんとに大丈夫だよ、私…

1人にして。』

TH「いやだ。」


　

私の手を掴んだテヒョン君の手は暖かくて、優しくて、振りほどこうとする私の抵抗ごと包み込む。


すたすたと長い足を動かし、根を張ったようにその場から動けそうになかった私を連れ出してくれる。



　



　




TH「入って。」


　



連れてこられたのは、男子部屋。

多分、テヒョン君と、ジミン先輩の。



　

『あ、ジミン先輩に悪いです…』

TH「鍵かけとく。」


　

迷いなくがちゃんと鍵を閉め、チェーンまでつけたテヒョン君。

驚いて硬直する私を見てにこりと笑うと、


　

『わっ、』



　
そのまま私をふわりと抱き上げて、ゆっくりとベッドの上に下ろす。




　

　









　




TH「弱ってるところにつけ込むのって、横恋慕の定石じゃない？」


　
　

甘くて低い声が響いた。

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