9話 ページ9
診療所を閉めようと外に出ると、血相を変えて走ってきたのはよく往診に行く家の孫。
「じいさんの様子がおかしいんだ!昼間までは普通に元気だったのに、急に容態が変わって…!!」
『!!わかった!すぐに行く!!』
嫌な予感がする。
シウの祖父…ユジュンさんは、肺を患っていて、高齢で診療所まで来ることができないから、私が定期的に様子を見に行っていた。
数日前に診たときは、特に異常はなかったはずなんだけど…
『テヒョン、ちょっと出るからあなたは留守番してて。』
「!俺もいく。」
『え?
…大人しくしててよ?』
説得する時間も惜しくて、三人で急いでユジュンさんの家へと向かう。
彼がいる部屋に入ると、布団の上でか細い呼吸を繰り返すユジュンさんの姿があった。
『…、ユジュンさん!聞こえますか?
私です。Aです!!』
彼に向って必死に呼びかけてみるけれど、反応はない。
これは…もう…
「先生!じいさんは!?」
『…』
「先生!!」
…寿命だ。
何か原因があるわけじゃない。
私にできることは、もう…
「そんな…、
こんなに苦しそうにしてるのに…!
このまま見てるだけしかできないのかよ!!」
『…、シウ…』
こんな時、自分の無力さを痛感する。
一人前の医者になったと思っていても、私にできることなんて実際は驚くほど少ない。
ユジュンさんの苦しさを取り除く術も持っていないなんて。
悔しくて仕方なくて、自分の手を痛いくらいに強く握る。
「…おじいさんに、ふれてもいい?」
『え?』
静けさを破ったテヒョンの声に驚き、俯かせていた顔を上げる。
戸惑いながらもコクリと頷いたシウを見て、テヒョンはゆっくりとユジュンさんの手を握った。
「おじいさん、いままでたくさんがんばったね。
もう、くるしまないでね。」
彼はとてもやさしい声でそう言うと、目を閉じて、さらに強くユジュンさんの手を握る。
すると…
『あ…。』
さっきまで苦しそうな表情を浮かべていたのが嘘みたいに、安らかな表情になったユジュンさんに、シウと二人目を見開く。
嘘…。
「はは、じいさんイケメンに手握られて浮かれてんのか?」
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つきこ(プロフ) - テヒョンのソロアルバム聴きながら読みました😭せつないけど最高のお話でした✨ (11月12日 20時) (レス) @page27 id: 449ba1617b (このIDを非表示/違反報告)
あいし(プロフ) - あかん。ほんまに泣ける😿 (2023年1月27日 15時) (レス) @page27 id: 6ccfb19ab8 (このIDを非表示/違反報告)
murasaki5027(プロフ) - 番外編、続編希望です!! (2022年5月26日 18時) (レス) @page26 id: 1f714ed38e (このIDを非表示/違反報告)
わたし。(プロフ) - このテヒョン、妄想ですがドタイプです!!!! (2021年4月22日 0時) (レス) id: 373e34b3f9 (このIDを非表示/違反報告)
ジョングガ - ミロさんの物語ほんとにLOVEすぎて困る、どの作品見てもいいわぁってなるし最高!面白かったりする話でも最後は泣ける話だったりして毎回楽しませてもらってます。本当に小説化して欲しいくらい笑これからも頑張ってください (2020年11月8日 1時) (レス) id: c6fa5ac741 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2019年10月14日 20時