15話 ページ15
「A、いきたいところがあるんだけど、一緒にきてくれる？」
『行きたいところ？
うん、いいよ、』
答えると、テヒョンは荷物を片手で持ち、私の手を引いて歩きだす。
何故かわらないけれど、
抱きしめられるよりも、キスされるよりも、こうやって手をつなぐ瞬間が、一番ドキドキしてしまうから不思議だ。
『日が沈んだら、森には入っちゃいけないんですよ？』
「だいじょうぶ。つれていったりしないから。」
村のはずれの森の中へ入っていくテヒョンに、一応村での決まりを伝えてみると、まるで自分が神様かのように答えるもんだから笑ってしまう。
「Aと森で会ったのも夜だったよ？」
『そういえばねぇ。』
なんだかもう、彼があの時の猫(虎)だったことに対して疑いを持たなくなりつつある私。
それはやっぱり、一緒に過ごしてるうちに感じるようになった、彼の少しの違和感からくるものなんだろうけれど。
「ここ。」
『…ここって…。』
たどり着いた場所にあったのは、とても小さく、そして古いお社だった。
言い伝えられてきたことは本当だったんだ。
だけど、こんな森の奥にあるせいか、お社は長年手入れされていないようで、そこに書かれた文字は読み取ることができない。
だから、このお社が本当に、虎の神様を祭って建てられたものなのかもわからなかった。
だけど、
「ここが俺の家なんだ。」
テヒョンがそう言うのなら、きっと“そう”なんだろう。
「昔はね、村のひとたちもたくさんきてくれた。賑やかで、楽しくて、かわいくて、愛しくて。
だけど何年も、何十年もたつうちに、誰も来なくなった。
しょうがないよね。時間がたつってそういうことだから。」
懐かしそうに目を細める彼に、私は何も言えなくて。
お社に、そっと触れた彼の横顔がただ、切なくて。
「忘れられてしまったら、消えるしかないんだ。
だから、今ここでこうしてAの隣にいられることは、奇跡に近い。」
『…誰も忘れてないじゃない。』
「え？」
『テヒョンが言ってること、多分私よくわかってないけどさ、
今日、テヒョンは村の人たちと話したじゃない。
誰もあなたのこと忘れてないよ。』
「…
そうだね…。」
少しだけ、
困ったように笑う彼に胸が痛む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 996人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つきこ(プロフ) - テヒョンのソロアルバム聴きながら読みました😭せつないけど最高のお話でした✨ (11月12日 20時) (
レス) @page27 id: 449ba1617b (このIDを非表示/違反報告)
あいし(プロフ) - あかん。ほんまに泣ける😿 (2023年1月27日 15時) (レス) @page27 id: 6ccfb19ab8 (このIDを非表示/違反報告)
murasaki5027(プロフ) - 番外編、続編希望です！！ (2022年5月26日 18時) (レス) @page26 id: 1f714ed38e (このIDを非表示/違反報告)
わたし。(プロフ) - このテヒョン、妄想ですがドタイプです！！！！ (2021年4月22日 0時) (レス) id: 373e34b3f9 (このIDを非表示/違反報告)
ジョングガ - ミロさんの物語ほんとにLOVEすぎて困る、どの作品見てもいいわぁってなるし最高！面白かったりする話でも最後は泣ける話だったりして毎回楽しませてもらってます。本当に小説化して欲しいくらい笑これからも頑張ってください (2020年11月8日 1時) (レス) id: c6fa5ac741 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミロ
| 作成日時：2019年10月14日 20時
