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私に才があったなら ページ5

「…………全ての始まりは、私に、魔法の才が無かったことです。それさえあれば、私はここにはいませんでした。良い意味で。」


「……モネ先生は、今が充実していると、言いましたよね」

「それはそれ、です。確かに今は充実していますが、それでも、才があったらと、期待しなかったことはありません」


いつもより美味しくなった、煙草の煙にのって、少しずつ、本音が吐き出されていく。


「いい加減、過去に向き合わなければならないのだと、思います。良い機会です。多分、ダンタリオン先生も、それを分かって、」


「…………」



「アクドルをしていたのは、生きる為。ただそれだけで。生きる為、とは言っても、生きて何かをしたかったわけじゃなくて。ただ、死 ぬのが怖かっただけで、」



「出来ることを懸命に取り組んで、ようやっと、ここまで来て。でも、ムルムル先生は最近、ダイアナ様としか、呼んでくれなくなって、」



「誰が悪いとか、そういうわけではない、と思います。だから、余計に、どうすれば良いのか、よく分からなくて、」



「拷 問、凄く怖くて。アクドルは、それのきっかけだから、元は、歌うことすら、怖くて、」



「また、あの頃の苦しみが、蘇ってきそうで、克服なんて、とてもできそうに無くて、」



「私は、何でここにいるのだろう、って、思ってしまって。」






気がついた時には、月に向かって、思いの丈を吐き出していた。






「………………すみません、急に、」

「僕は、好きですよ」

………え、


「【六色のピアノ】のことで、色々あったとき、モネ先生、よくここでヴァイオリンを演奏してましたよね。」

…………そういえば、まぁ。何となく、心が浄化されている感じがする、というか、、


「モネ先生のヴァイオリン、聴いていて、凄く心が安らぐというか。本当に音楽を好きなヒトだからこそ、出せる音なのかな、って」

…………ヴァイオリンが?


「モネ先生が、なんでここにいるのか、か………」




じゃあ、と目尻を下げたその顔は、今まで見てきた、どんなものよりも。











「僕にヴァイオリンを聴かせる為、とかじゃダメですか?」











ーー美しかった。

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作者名:Sela | 作成日時:2023年3月19日 10時

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