-二六頁目- 松下村塾の悪ガキ四人 ページ26
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陽も沈み、まんまるに満ちた月が夜道を照らす。最近よく晴れていたからだろう。
少年少女も並んで歩いていた。少年は大きな刀を帯刀し木刀を持ち、少女は懐に短刀を隠し重りで重くした木刀を引き摺っていた。
「 なー 銀ちゃん。なんでウチ連れてきたん? 確かにヅラの言っとることは本当やと思うよ?でも先生に言った方がええんちゃう?」
「 お前を残してったら絶対松陽にチクるだろ 」
「 もちろん。夜に出歩くのはいかんことよ 」
「 ハッ いまさらだろ 」
「 ( 悪い笑顔…… ) 」
でも確かにそうだ。いまさらだ。なんせA達は夜中に出歩くだけではなく、家の周りに油を撒き火を放ったのだから。
赤い目と黒い目が交わる。お互いに分かりきっていたようだ。
そんな時、聞こえた。あの二人の声が。
「 名門講武館きっての神童と悪童が手を組むんだ。役人の足止めくらいたやすかろう 」
「 名門の二人?笑わせるな 」
「 !! 」
「 国家転覆を狙う反乱分子を育成する悪の巣
松下村塾の悪ガキ
両端の死角に身を潜めていた高杉と桂。桂はわざわざ逃げるよう忠告してくれたのにまだ逃げていない二人を見て驚き「何故、」と抑揚をつけて叫んだ。
「 そりゃ松陽の話だろ。なんで俺まで逃げなきゃならねェ。それに学校のサボり方から夜遊びまで覚えたんだ。もうてめェらは門下だ 」
「 寂しいけどなぁ。お別れはちゃんとせんなんしな 」
いつも通りにぱっと笑っているAは銀時の隣を歩いていく。
「 どうせ俺とAと松陽は流れ者だ。居場所なんざどうにでもなる。でもお前らは違う。これ以上関わったら戻れなくなるぞ 」
士籍を失いてェのか。
銀時は二人に問う。
高杉は一歩踏み出し、Aの隣に並ぶ。
「 ……戻れる場所なんざあったらハナからこんな所に来ねェ 」
桂も一歩踏み出し、銀時の隣に並ぶ。
「 お婆が死んでから天涯孤独の身。元より、この身を案ずる者などいない
何より士籍などという肩書きが必要なものにはもうなる気はない 」
「 もしそんなもんがあんなら誰かに与えられるでもねェ 」
この目で見つけ、この手で掴む。
二人の重なった声にAは言葉に表せないほどの感情が渦巻いた。今は感傷的になっているところじゃない。息を吸って吐いて落ち着かせた。
「 ……そうか…ならもう、何も言わねェ 」
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運動系引きこもり(プロフ) - 琥珀@中也が尊いさん» 琥珀@中也が尊いさんコメントありがとうございます!分かりました、検討してみます! (2021年2月28日 12時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
琥珀@中也が尊い(プロフ) - 表紙がすごい銀魂感。作者様が書かれたのですか?あの、作者様が書かれたのであればもし宜しければ文字がないバージョンを上げて頂きたいです。すっご表紙好きです (2021年2月28日 1時) (レス) id: bc2916a5a7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - きみをさん» きみをさんコメントありがとうございます。あぁぁあ、ありがとうございます……ッ!更新頑張りますので是非とも本編の方も読んでいってください……!! (2021年1月31日 13時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
きみを - はぁぁぁ好きすぎる、、更新楽しみに待ってます! (2021年1月30日 23時) (レス) id: 2684e373b7 (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - リアさん» リアさんコメントありがとうございます……!一気読みしてくださって嬉しい限りです^^本編もどうぞ読んでください!映画は私も泣きました……。これからも応援よろしくお願いします (2021年1月26日 0時) (レス) id: 9fef19786d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:運動系引きこもり | 作成日時:2020年2月9日 17時