幕府のボディーガードさん4【銀魂】

第160訓-■■■篇-十 揺らいだ目 ページ10

.




「何の用や。」

「……！」

「私は人一倍耳がいいから。足音で誰が来るのか分かった。」




まるでこっちの反応が分かってるみたいに会話を続けた。仕事じゃない時の口調なのに冷たい。


俺はなるべく、気持ちが悟られないいつも通りに言った。


顔は見られてねーけど振り返った時の為に真顔でいる。……山崎にいつか「隊長はポーカーフェイスだ」って言われたからそれを利用する。




「別に。説教してきたくせに犯罪を犯し捕まったという惨めな上司を笑いに来ただけでィ。」

「……趣味悪いな。」

「俺にとっちゃあ褒め言葉でィ。」




こんなの、ただの口実に過ぎねェ。俺が言いたいのはそーゆー事じゃねェんだよ。違ぇんだ。


俺は軽く深呼吸すると、本来の目的を口にする。




「…………さっさと犯人を吐け。」

「？何言っとるんや、アンタらが証拠持ってきて私を逮捕したんやろ。」



俺に口を挟ませまいと姐さんは「それに、」と口早に言う。




「何にしろ、“東雲”がやった事には変わりない。捕まるのも時間の問題やと思っとったし。」

「でもアンタにはアリバイが、」
「私は！」




少し語尾を強め姐さんからはあまり考えられない位の、静かに尖った大きな声がまたもや俺の言葉を遮った。

少し振り向き今初めて目が合った。

辺りは暗いはずなのに姐さんの黒い目はまた別の色に見えた。







「───────信じたいの。」







その瞳が悲しそうに揺らいだ。何を思って言っているのか……分からない。

俺は黙ってその場を去ろうとした。これ以上は無駄だと判断して。














「待って。」

「……？」

「さっき銀時達の声が聞こえたんやけどなんであの人らが」
「知らねーよ。」




口早に止める。聞きたくなかったからだ。
その口から旦那の名前を吐き出されるのも嫌だ。




「何して捕まったんやろ、やっぱ街中でスカイブルースープレックスホールドを決めこんだせいやろか。」

「アンタ本当はレスリングじゃなくてプロレスファンだろ。」





.

第161訓-■■■篇-十一 悲願→←第159訓-■■■篇-九 複雑

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す