幕府のボディーガードさん4【銀魂】

第180訓-■■■篇-三十 私を殺す ページ30

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｢しずき……？何を言うとるんや？｣


｢姉さん。僕は姉さんが好きだけどそれ以上に【いおり】が好きなんだ。【いおり】はそんな喋り方しない。そんな訛った口調じゃない｣




しずきは私に何を求めとるんやろう。
しずきにとっての【姉】？
いおりは……もう捨てた名や。

彼は銃を持っている手とは逆の手で懐(・)から、そこにおさまるはずのない長さの槍を取り出した。


ああ、私も大剣を持ってき取れば……。


短刀を握りしめるとしずきは笑った。幼い頃、私に見せてくれていた変わらないあの笑顔を。




｢僕は【いおり】と一緒に生きたい。あの時のようにまた白い花が狂い咲く、“約束の地”と呼ばれたあの花畑で……一緒に…だから！！｣




しずきは銃と槍を向ける。構えてはいるが、弟に刃を向けるのか？でも向こうは私を殺そうとしとる。気配からして分かる。

私が刃を持つ理由はしずき(弟)を護るためやったやろ？それなのになんで私がしずきに向かって攻撃態勢をとらんといかんのや。


どうしても捨てきれない迷いが私を躊躇わせる。刀を持つ時、覚悟は決めないといけないのに。迷いが、出ている。



そんな私を背中に隠すように庇った沖田さんの行動に驚いた。はたまた私の情けなさに呆れでもしたんやろうか。


私は私の事を隠し続けていた。一線も引いていた。今は将軍様達以外の大切なものなんて必要ないと思っとったから。



────私の事、なんも知らんのに。それが喧嘩の原因になったはずなのに。



すると沖田さんは、は、と息を吐いた。




｢自分の姉と一緒になるために姉を殺す？矛盾してんじゃねーか｣

｢沖田さん…｣




姉を、殺す。沖田さんだったら考えられないことだ。誰よりもミツバさんを慕っていたから。たった一人の家族を愛していたから。

だから、この状況は沖田さんにとって最悪な出来事や。

しずきは沖田さんの問いに答えた。




｢矛盾なんてしてないよ。全て一つに繋がっている。姉さんを殺して【いおり】に戻す。“A”という【エラー】を直すという意味でもあるかな｣




しずきは何も包み隠さず私を殺すと、そう言った。こんなに絶望を感じたのはいつぶりやろう。銀時に拒絶されて以来やろうか。

そもそも【いおり】に戻すとか【エラー】だとか、私は馬鹿だからよく分からない。しずきは昔から頭が良かった。

母が死んでからずっとあの部屋で勉強をしていたから。




｢でもそれでも僕は今の姉さんも好きだから。自分の手で姉さんを殺すなんて出来ないんだ｣





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