幕府のボディーガードさん4【銀魂】

第174訓-■■■篇-二四 彼奴の正体 ページ24

自分で口にした“土方”という名前の人物は煙草を咥えたままこちらに振り向く動作をする。ノイズ音が酷くなってきたがそれでもその人物の声が嫌でも耳に入った。


訳分からない言葉が聞こえ、思わず「はあ？」と言ってしまった。こんなにも頭が痛いのに。




「お前が何日も何日も仕事をサボりやがるからこちとら迷惑してんだよ。溜まってんだ、書類。だからさっさと帰って仕事しやがれ。もうサボりは許さねぇ」


「……………」





この男は、何を言っているのだろうか。

そう言おうとすると、赤毛の男はそれを防ぐように蔦をこちらに向けてきた。早く動かなければいけないのに体勢が整っていない。むしろ今は寝そべっている。

顔を強ばらせると、意味わからん事を言っていた男がまたもや庇う。





「なんで……」





酷くなってきたノイズ音と頭痛に耐えながら、両手で上半身をなんとか起こした。

しかし、動こうとすると目の前がもっと真っ暗になってくる。それでも、それでもなんとか壁伝いに立ち上がった。





「オラ、行け」


「…………っ」





言われるがまま、反対方向を向き歩き出した。走る気力なんてない。一歩ずつ進んで行った。


後ろの方で刃と固いものがぶつかる音がする。おそらく戦っているのだろう。何故か殺そうとしてきた赤毛の男と何故か庇ってきた黒髪の男。


とにかく、回り道をしてしずき達がいる部屋に向かおう。確か……※右だっけ？
※左です









○○○


【土方side】



─────東雲Aとは一体何者だ。



そんな考えがぐるぐるしていた。目の前にある、他の船より一回り小さい船を見上げ、俺は煙草に火をつける。

ここにたどり着けたのは偶然だった。

取調室のしん、とした空気の中、似つかわしい銃声が部屋の外から聞こえた。何事だと騒ぐ俺らの前に現れたのは、泣きっ面下げたザキと銃のリボルバーを下げたとっつぁんだった。


近藤さんが驚きながらとっつぁんと呼ぶと、とっつぁんは何も言わず二、三枚だけまとめられた紙を投げ、紙はふわりと机の上に落ちる。

不審船リストの一番上に書いてあった飛燕海屋。商船だった。




「んじゃあこれヨロシク〜」

「まっ！待ってくれとっつぁん！俺達今これを見ている暇がないくらい忙しくて……！！」

「あーうんうん 分かるよ分かる。Aがさ〜何日もサボっちゃうからおじさんほんっと大変でさ〜。これじゃあキャバクラ行く暇もないよ〜……だからさぁ」


そこでとっつぁんは一拍置いた。



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