2222-64 ページ17
考えた結果、プロヒーローを案内してきた体で通すことに決めた。
「通報した者です！ 現場はこっちの通路です」
数名のプロと一緒に轟君達と顔を合わせる。うん、皆意識はあるね。怪我は多いけど。でもこれなら、今までで1番軽い怪我だ。内心ホッとした。
「喩語お前遅かったな」
「この付近で迷って先に通報を優先したんだ。とりあえず怪我はしてるけど皆無事だね？」
「喩語くんまで……すまない……！」
うっわ心が痛い。わけありとはいえ私は見ていただけだからなぁ……。でもまあ、いつもより怪我が軽くて本当に良かったよ。
「ううん、私は何も……通報しかしてないから」
「伏せろ！！」
……え？ 黄色い戦闘服の老人、グラントリノがそう叫んだ時、目の前を何かが横切った。
飛ぶタイプの敵か。起こった風に思わず目を瞑る。通り過ぎた頃に目を開けると、緑谷がそいつに掴まれていた。
エンデヴァーが取り逃がした脳無か！ クッソ、私の個性だと追うのに時間が掛かるが……彼を救うなら仕方ない。
「飛べれば……」
個性を使おうとした刹那、ボロ切れのような赤黒い布がはためいた。しまった、ステインが拘束を解いたのか。思わず言葉を飲み込むと、ステインは脳無にとどめを刺し、緑谷を抱えた。
「全ては正しき社会の為に」
そうはっきりと聴こえた。彼の信念を如実に表す雰囲気にその場の全員が呑まれかける。
ハッとしたヒーロー達がステインを捕える為に戦闘態勢をとろうとした時、エンデヴァーがこちらに到着した。
「……よかった」
前までの世界の展開と照らし合わせても、彼が現着したということは、ステインを捕えられることと同義だ。フラグ回収といったところだろうか。
と、勝手に1人で安心していたのだが、ステインはその怪我でも尚エンデヴァーに向かっていった。
「俺を殺していいのは、
今度ははっきりと、そのイカれたような執念に全員が呑み込まれた。エンデヴァーも、私でさえも。
やけに長い数秒間が経過し、エンデヴァーの1言でステインが気絶していることに気付いた。それも、立ったまま。彼が悪党にカリスマだと囃し立てられるのも頷ける。
轟君もその場に尻餅をついていた。私も初めてだったら気絶していただろう。無意識のうちに呼吸が浅くなっていた。
ヒーロー殺しとの戦いはこうして終わったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りっぴい(プロフ) - 作品全部読ませて頂きました！質問なのですが、この作品のように字や背景を変えるようにするにはどうすればいいのでしょうか。 (2018年4月7日 0時) (
レス) id: 72a6f55e69 (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 冷やしチョコさん» 個性が好評のようで嬉しく思います。文才は……大変恐縮です。更新頑張ります！ (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - ログインしたくない病さん» 評価だけでなくコメントまでしていただけて私はとても嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 牙夢さん» 今回は更新じゃなくて申し訳ありません。続編もお楽しみいただけるように努めたいと思います。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
冷やしチョコ - 文才があるってこういう事なんだな…としみじみ思います。個性のアイディアが面白いし、何より小説の内容が面白いです。更新楽しみに待ってます！ (2017年8月29日 0時) (レス) id: 691aea1734 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月13日 3時
