【鬼滅の刃】君がため《短編集》2

童磨『君だけを』 ページ14

童磨side




「A…！！後もう少し耐えて…！！お願いだよ…」




俺のせいで…Aは鬼と勘違いされて、斬られた。



あぁ、なんてこの世は残酷なんだろう…。



神なんて、いないって分かってた



だけど今だけは何かに縋りたくて…。



人間の気持ちが分かった気がした。



あぁ…人間は…神という名の希望を作って、それに縋って生きているんだね。



だけどお願いだよ…。例え神が作られたものだとしても…。




願いを聞いておくれ。




「Aを…連れていかないで…」



その願いは虚しく空に消える。



Aから流れる血は、止まらない。




もしもこれが今まで人を殺してきた天罰だとするのならば。




どうかお願いだ。Aだけは助けて欲しい。




あるのならば、地獄にだって行ってやろう。




「何度地獄を巡ったっていい。

だからお願いだ…。Aを…。助けてくれ…。」




「駄目よ…。童磨は私と一緒に天国に行くんだから…」




「Aっ！！」




再び目を開けたA。



もう少しであの方の元へ行ける。よかった。間に合う！



そう安堵した俺の心をまたAの言葉に乱される。



「ねぇお願い童磨…私を鬼にしようだなんて思わないで…。

私は今の私のまま、童磨を好きなままで終わりたいの。

鬼になって童磨を嫌いになりたくないの。」




そうだ。確かに鬼になれば助かるが、記憶は消え、鬼同士を嫌い合うようになる…。だけど…




「だけど…俺は…。君が生きていてくれるのならそれでいいのに…。」




俺が悲しげにそう言うとAは優しく笑った。




「ありがとう童磨…。そんなに私を思ってくれて…。

嬉しいよ。私。だからこの思いを死んでも忘れないよ。

だから童磨も…この先何千年経とうと…私のことを…覚えていてね…」




「あぁ…もちろんだ。絶対に忘れはしない。

A…。これからも…ずっと愛しているよ…。」



優しく優しくAを抱きしめ、愛おしい唇にキスを落とす。



Aは笑ったまま息を引き取った。



これから何年、何百年…いや、何兆年になろうとAの事を忘れない。


君との約束を忘れないように…。


今日もA、君だけを…愛しているよ…。

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