【鬼滅の刃】君がため《短編集》

伊黒小芭内『笑顔』2 ページ11

敵の血鬼術により、何らかの影響を受けたらしい。



話すことも、笑うこともない。



まるで冨岡のようだ。




「伊黒さんっ！！」




そう笑いながら呼ばれることもないのだ。



まさかあの笑顔が最後になるなんて。



思いもしなかった。



今日もいつもと同じように外を眺めているA



その顔はやっぱり何を考えているか分からない。



伊黒「すまなかった…A…。

本当はお前が大事で、傷ついて欲しくないから、鬼殺隊にいて欲しくなかった。

俺に守らせて欲しかったんだ。」




そう手を握りAに語りかける



するとゆっくりとこちらを見るA



貴「…。……。」




何が言いたげに口を開けるA。



だが喋ることの無いA。諦めたようにそっぽを向いてしまう。



俺はその時シーツに落ちた、雫を見逃さなかった。




そっとAを抱きしめる



伊黒「大丈夫だ。お前が話せなくても。笑わなくても。

俺はそばにいる。これからも、ずっと。

離れて初めて気がついた。失ってから気づくなんて、遅すぎたんだ。

お前の声も、笑顔も、全てが好きだったんだ。」





貴「わ……た………し……も…す…き…。」




出ないはずの声を、動くことのない唇を必死に動かして




返事をしてくれるA。




あァ…やっぱり愛おしい。いつか必ず俺が、…お前をもう一度笑わせてみせるから。



抱きしめる腕を強めた。

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