7.心臓が重くて泳げない ページ7
.
火曜日二限、講義始まるギリギリに教室についたAちゃん。
教授に頭を下げながら、俺らのいる席より前の方の入り口近くの席に座った。
小さい後ろ姿。スマホをしきりに気にしていた。
講義が終わっておはよーという声に覇気がない。
今日何食うと呑気な景瑚。
「Aちゃん今日元気ないやん」
だぼっとした大きめのパーカーでいつもよりラフな服装。
眼鏡をかけてるの、初めて見た。
レンズの奥の目が赤い気がする。
顔を覗き込もうとしたら、そんなことないよ!って顔を逸らされた。
「最近るっくんとどうなの」
パスタを巻きながら景瑚が爆弾を落とす。
口入れようとしていたペペロンチーノのブロッコリーがお皿に落ちた。
「どうもこうもないよ」
「うまくいってへんの?」
「なんかさあ、浮気してるとかはないと思うの、そういうことしないって景瑚もわかるでしょ」
「うん」
「でも心がもうここにないんだろうなあーとは思う」
「「あ〜〜〜〜〜」」
思わず景瑚と声がハモってしまった。
会うたびに些細な言い争い、心がすり減るとため息を一つ。
別れればいいじゃんという景瑚の簡単な言葉に、でもまだ好きなんだもんと涙声。
いつもなら何泣いてんだよ!とふざける景瑚も、
この時ばかりは黙ってAちゃんの頭にポンと手を置いた。
俯いた泣きそうな顔に、僕まで胸が痛い。
「よし!今日は休講だ!」と急に立ち上がり、
買い物いこ!と明るい声を出す。
Aちゃんは、えー?とめんどくさそうな顔をした景瑚の腕を引っ張って立ち上がらせ、
純喜くんも行くよねとこっちを見た。
今日初めて目が合った気がする。
東京でも平日昼間の街は人が少なくてええな。
文句を言っていたくせに一番買い物をした景瑚が重い、純喜くん持ってと駄々をこねる。
俺も水色のTシャツを買った。似合うねと言われて買った。
Aちゃんはそれ同じ色ちゃう?と言いたくなるリップで散々悩んだ後、
後から試したほうを買っていた。
何が違うのと言ったら、全然違うよ!と怒ったような顔で笑っていた。
.
8.言うことよりも飲み込むことの多い一日→←6.アンニュイキャラメルコーティング
951人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し96612号(プロフ) - コメント失礼します!いつもふふさんの作品大好きで密かに読まさせてもらってます!降り注ぐ幸福の下でが見たいのですが、友達申請してもよろしいでしょうか? (2023年1月31日 23時) (レス) id: 4a8c56b8ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふふ | 作成日時:2021年4月20日 16時