40.春を繋いでそばにいて ページ41
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「Aちゃん」
「何?」
「どんくらい飲んだん?」
「そんなに飲んでないよ」
そう言ったけど、俺の腕をぎゅっと掴むAちゃんは結構酔っぱらっているようにみえる。
そうじゃなきゃこんな人の多いところで腕に掴まってきたりしない。
そのまま俺の家に着くまで何も言わないで押し黙ったままだった。
「とりあえずお風呂入る」と言って浴室に消えていったAちゃんを待ちながら、さっきの光景を思い出す。
数回しか見たことないけど、あれは確かAちゃんの元彼だったはず。
Aちゃんと元彼が手を繋いでいるのを見て心臓が止まるかと思った。
正直、OB会に行くと言われた時から気が気ではなかった。
でもAちゃんが久しぶりに昔の友達に会えると嬉しそうにしていたし、元彼の話は何一つせんかったし、俺が止めるのも違うかなと思って何も言わんかった。
不安にならないのかと言われたら、そりゃあもう当たり前になるけど、俺はAちゃんのことを信じているから大丈夫だ。
さっきだって手を繋いでいたとはいえ、Aちゃんの表情はかなり曇っていたし、
親しい人に向けるものではなかった。
「お風呂ありがとう」
もう何度も見たすっぴんだけど、何度見ても可愛いなと思うし、なんだかAちゃんの攻撃力も防御力も下がったように感じて庇護欲がふつふつと湧き出る。
未だ酔っているのか、酔っているせいで眠たいのか、隣に座り込んで俺の手を繋いだAちゃんがいつもよりもゆっくりとした口調で喋る。
どこにも行かないでと思う反面、自由にしてほしいと思う。
こんな気持ちAちゃんは分かってくれるのかな。
「Aちゃん」
「なに?」
「今日楽しかった?」
「…楽しくなかったよ」
「そうなん?」
「うん、純喜くんといるのが1番楽しいよ」
「そっか」
「そうだよ」
やっぱり情けなくても女々しくても
男の沽券がとかプライドがとか言わないで
素直に行かないでと言えたら良かったと思う。
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名無し96612号(プロフ) - コメント失礼します!いつもふふさんの作品大好きで密かに読まさせてもらってます!降り注ぐ幸福の下でが見たいのですが、友達申請してもよろしいでしょうか? (2023年1月31日 23時) (レス) id: 4a8c56b8ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふふ | 作成日時:2021年4月20日 16時