16.うるさいくらいの彩度で抱きしめて ページ16
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「急に呼び出してごめんね」
「全然ええよ」
「…純喜くん、最近私のこと避けてる?」
「そんなことないけど」
「そっか」
テイクアウトしたレモネードを持つ手が冷たい。
まだ外で話すには寒かったかもしれない。
話があると意気込んで呼び出したけれど、いざ目の前にしてみると言いたかったことが上手く出てこない。
沈黙がつらい。
2人でいるとたくさん話してくれる純喜くんと、今日は一回も目が合わない。
なんか泣きそうかも。
「もう俺、こういうのやめるわ」
と隣に座る純喜くんが口を開く。
「何でそんなこと言うの?」と聞くと、純喜くんは苦笑いをして口籠もった。
風で前髪がサラサラと揺れる。西日でオレンジ色になった横顔。
「…私、この前、瑠姫に会ったの。」
「うん」
「会うまではすごく不安だったの。でも戻りたいとか思わなかったし、あんなに辛かったはずなのに、正直全然平気で。それってきっとずっと純喜くんがそばにいてくれて、笑いかけてくれてたからだったなって気づいた。今までたくさん迷惑かけちゃったけど、純喜くんが隣で笑っててくれると嬉しくて、悲しい顔とかしないでほしいって思ったの。
…会ってない間、純喜くんのことたくさん考えてたよ。」
泣いちゃダメだと思うほどに目頭が熱くなる。
こんなふうに自分の気持ちを伝えることなんて初めてだ。
「あの!もう遅いかもしれないけど、ちゃんと伝えたくて」
「ちょ、まって!ごめん!」
「え、うん」
純喜くんが顔を上げてこっちを真っ直ぐに見つめる。
いつもより真面目な顔。
冷えた私の手をそっと繋ぐ。
「Aちゃん、好きです」
私も好きです、と答えると太陽みたいな笑顔で笑って、胸の中に閉じ込められた。
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名無し96612号(プロフ) - コメント失礼します!いつもふふさんの作品大好きで密かに読まさせてもらってます!降り注ぐ幸福の下でが見たいのですが、友達申請してもよろしいでしょうか? (2023年1月31日 23時) (レス) id: 4a8c56b8ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふふ | 作成日時:2021年4月20日 16時