15.魔法はそこにある ページ15
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一人きりの部屋で、小さな画面で見るミュージックビデオにこみ上げる。
昔流行った映画のタイトルに心が動く。
道端に咲いているタンポポに思いを馳せる。
新しい靴を履いた日に限って降り出す雨にうんざりする。
寂しいも楽しいも写真にのせてやっと感情になる。
なんとなく悩んでいるときや落ち込んでいるときを見逃さない。
誰にでも同じくらい優しい態度で、誰にでも同じくらいの優しいと言葉を置いていく。
特別なことは何もない。
でもどうしても心に残る、そんな人。
純喜くんは香水じゃなくて自然なせっけんのような匂いがする。
多分柔軟剤とかなんだと思うんだけど、たまに同じ匂いの人がいて思わず振り返ってしまう。
駅のホーム、大学の図書室、友達と行ったショッピングセンター、最寄りのカフェ、人ごみの交差点。
本当はいつも純喜くんを探していた。
純喜くん、明日の4限おわり空いてたりする?
空いとるよ!
会える?
うん!なんかあった?
話したいことがある!
メッセージを送って返信が来るまでの間、何度もトーク画面を開いては閉じた。
そんな事をしていたから返信がきた瞬間に既読をつけてしまって、恥ずかしい気持ちになった。
オッケーという純喜くんがお気に入りのパンダのスタンプに、同じシリーズのよろしくねというスタンプで返した。
ベッドに入って目を閉じても眠れなくて、爪を塗りなおした。
桜みたいなピンクがお気に入り。
左手の小指の端っこが少しだけよれてしまってそれだけで泣きたい気持ちになった。
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名無し96612号(プロフ) - コメント失礼します!いつもふふさんの作品大好きで密かに読まさせてもらってます!降り注ぐ幸福の下でが見たいのですが、友達申請してもよろしいでしょうか? (2023年1月31日 23時) (レス) id: 4a8c56b8ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふふ | 作成日時:2021年4月20日 16時