好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ48)

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慎吾が出ていく背中を見送って、その視線をAへとずらす。

何となく気を遣ってしまうのは、彩登美のことがあるからで。

「‥なあ、A」

『ん？』

「彩登美のことなんやけど、まあ、どうでもええと思うんだけど」

Aは、“なに”と首を傾けた。

「ここを辞めてからは、楽天で球団スタッフしてたらしい。それで、今はメンタルトレーナーになるために、いろいろ勉強してるらしいんだけど、」

『へえ‥』

下唇を柔く噛む。
微妙な空気に、言葉を続けて良いのか考える。

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「上司の紹介で海外のマイナーリーグに、勉強しに行くらしいんだよ。とうぶん帰ってこれないらしいから、挨拶しときたかったからここに来たって‥」

『‥そうなんだ』

何でこれをAに話そうと思った？

俺は何を間違えたんやろ。

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『お似合いだよ、』

ふいに言葉を発した彼女を見る。

『後悔してるんでしょ？あの時のこと、忘れちゃう前に、話せなくなっちゃう前に。ちゃんとリスタートしなよ』

“って、偉そうに何言ってんだろ”

伏し目がちに彼女は、表情を固くした。

「そういうつもりやない」

『うん、』

何が“うん”なん？

分からん。

「なあ、」

『‥っごめん。私が首突っ込む事じゃないよね。私も話があってきたの』

『連載、来月で終わることになったから。‥‥一緒に仕事できるのも、あと少しだね』

俺をまっすぐに見て微笑んだ。

一瞬の瞬きが、永遠に感じた。

別れはいつだって唐突だ。

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