好き、嫌い、好き Ⅱ (ページ12)

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Aのマンションの前で静かに止まったタクシー

鞄から財布を出そうとする彼女より先に、準備していたお金を出す。

こういう時、彼女は本当に申し訳なさそうな顔をする。
奢ってもらって当たり前、みたいな顔しない。

『勇人、』

「いいから、早く下りい」

財布を握りしめていた彼女を押し出す。

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『ありがとう、ございます』

何か言いたげ。
それでもAは、何も言おうとしない。

こういうタイプの女と付き合ったことがないから、よう分からん。

これから一緒に仕事するんか。
今日も見て思ったけど、仕事とプライベートの姿とのギャップがありすぎて

正直戸惑う。

「じゃあ」

どうも、今日の俺は俺らしくない。

疲れてるんかな。
早よ帰って寝よ。

A、ちゃんと家入ったかな。
そう思って振り返る。

「‥‥」

何してんやろ、
ちょっと顔を下げてその場から動こうとしない。

(相変わらず、ちょっと抜けてるわ。)

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「A、」

聞こえんかった？
数メートルくらいしか離れてへんけど。

「Aっ」

もう一度彼女の名を呼ぶと、ハッとしたように顔をあげた。

『、っ』

マンションの明かりに照らされたAは、

やっぱり顔だけはええわ。

『なに？』

ぶきっちょに尋ねて、首をかしげた。

「早よ家入り。」

俺の気のせいかもしれん。

ちょっとだけ、残念そうに見えたのは。

彼女は小さく頷いた。

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「またな、おやすみ」

Aは少し、驚いた顔をした。

Aは、柔らかく微笑んでマンションの中へと消えてった。

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