30話 ページ30
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適当な慰めを私に投げて寄こした後、トントン先輩はなにやら考え込んでいる。
そして口を開いたかと思えば、
「……でも、ショッピ君とやったらAは絶対コケるよな、身長差で」
「先輩も私が転ぶところ見たいとか言わないですよね?」
「言わへんよ、足捻ったらちゃんと手当てしてもらいに行くんやで」
あぁ優しい…!やっぱり私には先輩しかいない。
久しぶりに人に優しくされたと感涙すれば、いじめられてるのかと心配される。二人三脚の件なら間違いなくいじめられてる。
「……そうだ、先輩は二人三脚じゃないですよね?」
「おん、ちゃうで」
「よかった……先輩が女の子と密着しなくて本当によかった………」
「言うとくけど、俺は相手がショッピ君でも若干嫌やからな」
「最近先輩が正直で私は嬉しいやら心臓に悪いやら、複雑な気分です」
不服そうに顔を顰める先輩に、赤くなった頬を隠しつつそう言う。
だから私も女の子とペアがよかったって言ったのに!ショッピ君も学級委員さんも絶対許さない。でも先輩がヤキモチ妬いてくれたので完全に許してあげよう。
「先輩は何に出るんですか?」
「はぁ……借り物競走。じゃんけん負けてん」
「へぇー。そんなに嫌なんですか?借り物競走って」
「あれはな、あかんで。Aも覚えとき」
物凄い眼力で諭されたじろぐ。
借り物競走は3年生メインの競技で、毎年一番盛り上がると誰かから聞いたような。確かに先輩が一番盛り上がる競技に自ら進んで出たがっているのも想像がつかないので、本当に嫌なんだろう。
「まぁでも、狙ったものが借りられるか不安ですよね」
「ちゃうねん、その『借りるもの』がおかしいねん、毎年毎年」
「え、…そんなに難しいお題なんですか?」
「……せやなぁ、まぁ今年は当てがあるからええけど、」
若干私の質問を濁した先輩は、「当てがある」と言う。まるで既にお題を知っているかのような口振りに、私の頭はますますハテナでいっぱいに。
「とにかく、先輩が女の子と密着することは無いと分かったので、大人しく二人三脚に集中することにします…」
「コケても競技中は助けに行かれへんからな、気ぃつけるんやで」
「ショッピ君にキズものにされるとか死んでもごめんなので、先輩の為に取っておきます」
「俺かてせぇへんわそんなこと」
先輩にキズものにされたらあわよくば付き合ってもらえるかな、と妄想を膨らませつつ、先輩と話す片手間にまたテスト勉強に励んだ。
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美雨 - この作品お気に入りすぎて5回くらい見ました、、、()本当に素敵な作品できゅんきゅんしまくりです!!!最後の言葉がぐっと来て本当に泣きそうになりました。素敵な作品ありがとうございました。 (2023年1月7日 17時) (レス) @page50 id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆ - はぅ、、、、、とんとん、、、、、ちゅき、、、、、 (2020年9月28日 11時) (レス) id: f773b15172 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - 初コメ失礼します…あー!!!!!甘酢っぺぇ!会社の方見てからこっち来たんですけどどっちも甘々なのになんか、両方とも違う甘々でくっときました…天才ですか…好きです。長々と失礼いたしました…これからも応援しています…! (2020年7月13日 6時) (レス) id: 57a2a5c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もうなんか今順番に読んでるんですけど必ずと言っていいほど泣くんですけど、え?tn氏かっこよすぎん?好き。 (2020年5月26日 3時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 初コメ失礼します!もう感動しすぎて泣いちゃいました........ (2020年5月13日 17時) (レス) id: a7dcf8f420 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2019年12月31日 0時