11話 ページ11
.
と言うのも、今まで散々付きまとっておきながら、先輩に進路を聞いたことは無かったのだ。
理由は1つ、「大学までついてくるつもりかよコイツ」と思われたくない。それに尽きる。言うなればそれは、私なりに節度を弁えた距離感を保っているつもりだったわけで。
なのにたった今、いともあっさりとその距離感を踏み越えてきたトントン先輩。余りにも躊躇なく教えてくれたため、逆に私が戸惑ってしまう。
「えぇと…それ、私聞いても良かったんですか…？」
とりあえず人違いじゃないかどうか確認。今あなたの目の前に居るのは、トントン先輩の事が大好きで仕方なくて先輩の為なら野を超え山を越えのAですよ、という事を遠回しにアピール。
「ん？ダメな理由とかあったっけ？」
「だ、だって先輩…私が進学先までついてきたらどうするんですか！」
「はは！自分で言うねやそれ」
「笑い事じゃないです！もう…もう！」
だってそんなの。
一緒の所に来てもいいよ、って言われてると勘違いしちゃうじゃん。私、馬鹿だから。
先輩はそんなに深く考えずポロッと零しただけなのにそんなことばかり考えてしまう私。
「あーもう、なに急に怒ってんねん」
「怒ってないです！全っ然！」
「めっちゃ怒っとるやんけ…」
先輩はいつもいつもずるい。私の気持ちにはちっとも動揺してくれないくせに、私の心ばっかり揺さぶってくるんだもん。フェアじゃない。でも好き。これ、惚れた弱みだ。
「とりあえず、書かな帰られへんねやろ？適当に俺と同じ所で書いとけばええやん」
「そうですけど…嫌じゃないんですか、」
「何がやねん、そっちこそ嫌なんか？」
「そんな訳ないじゃないですか！」
ええいままよ！と勢いに任せて『S大学』と書いてしまった。先輩と同じ大学、と考えただけで頬が緩みそうになるのを慌てて堪える。
「まぁ、学力的な問題で不可能なんですけど……」
私はS大学のことは全然知らないけれど、先輩が目指す大学ならきっと理数系の学校なんだろう。天地がどうひっくり返ろうと私が行くことは不可能だ。
「せやな、数学3点のままじゃ厳しいなぁ」
「それ、今すぐ忘れてもらえます？」
余計なことは覚えてる先輩。こういう所もずるい。
あぁそうだ、余計なことと言えば。
「先輩、コネシマ先輩に私が赤点補習って教えたでしょ」
「ん？なんの事やろなぁ、わからへんわ」
「そっぽ向いても誤魔化されません！」
口笛を吹きながら斜め上の方を見る先輩。逮捕だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美雨 - この作品お気に入りすぎて5回くらい見ました、、、()本当に素敵な作品できゅんきゅんしまくりです！！！最後の言葉がぐっと来て本当に泣きそうになりました。素敵な作品ありがとうございました。 (2023年1月7日 17時) (
レス) @page50 id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆ - はぅ、、、、、とんとん、、、、、ちゅき、、、、、 (2020年9月28日 11時) (レス) id: f773b15172 (このIDを非表示/違反報告)
水飴(プロフ) - 初コメ失礼します…あー！！！！！甘酢っぺぇ！会社の方見てからこっち来たんですけどどっちも甘々なのになんか、両方とも違う甘々でくっときました…天才ですか…好きです。長々と失礼いたしました…これからも応援しています…！ (2020年7月13日 6時) (レス) id: 57a2a5c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もうなんか今順番に読んでるんですけど必ずと言っていいほど泣くんですけど、え？tn氏かっこよすぎん？好き。 (2020年5月26日 3時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 初コメ失礼します！もう感動しすぎて泣いちゃいました........ (2020年5月13日 17時) (レス) id: a7dcf8f420 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2019年12月31日 0時
