41話 ページ41
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サラサラ、と指をすり抜ける掴みどころのない髪は鬱くんのものらしくて思わず笑みがこぼれる。
平日の朝なのに、こんなにのんびりとボランティア活動に勤しんでいてもいいのだろうか、と時計を気にしつつもこのゆったりとした空間からは抜け出せない。
事務的に言われるがまま髪を乾かしている私に完全に頭を預けている鬱くんも、暖かさからかまたうつらうつらと船を漕いでいた。
柔らかな髪に指を滑らせつつ、後ろからその頬をギュッと摘む。
「二度寝禁止」
「……てきびしー」
「私だって眠たいのに」
不服を滲ませながらカチリとドライヤーをオフにして、クシを通す。「だってAの手気持ちええねんもん」と朝から穏やかじゃないことを言ってのほほんと笑う。
ひとりで勝手に焦っている私はその背中をバシッと叩いてドライヤーとクシを片手に鬱くんに背を向けた。
「なぁー、A」
洗面所の扉に手をかけたとき、私を呼ぶ鬱くんの声。
扉を開きっぱなしにしておけばリビングの声も聞こえるような距離にいた私はそれに立ち止まることもせず、洗面所の棚にドライヤーを戻しながら「なーに？」と返した。
「そろそろ付き合わへん？」
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「………は？なんて？」
慌てて洗面所から顔を出し、まるで「今日飯食いに行かへん？」とでも言うようなトーンで紡がれたそれを慌てて聞き返す。
「俺の話ちゃんと聞かへんからそうなんねん」とブツブツと文句を垂れる鬱くん。こればっかりは言い返せずに「ごめん、」と謝る。
謝りつつまた隣に座り、チラとその顔を見上げる。
もう一回言ってよ、と言うように。
「なんでこんなこと何回も言わなあかんの、めっちゃダサいやん俺」
「ねぇお願い、もう一回、」
鬱くんの訴えなどスルーして、縋るような気持ちでグッと服を引っ張る。
「…それずるいねんけど」とため息混じりに呟く鬱くんは私を見つめる。
「………Aとずっと一緒におりたいから、付き合ってよ」
「さっき…そんな言い方じゃなかったじゃん｣
「やかましい。どうせ聞いてへんやろ思ったから言わんかってん」
もう言わへんぞ、とそっぽを向く鬱くんの背中にそっと腕を回す。
「で？返事は？」
「……鬱くんだから、いいよ」
やっぱりそれを受け入れた私。
抱き締め返されたそれも、鬱くんだから胸が高鳴るし、鬱くんだからずっとこのままでいたいと思うのだ。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
