37話 ページ36
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煌々と電気の明かりが付くリビングの中、いつも2人で過ごしていたこの空間で、私は今文字通り鬱くんに押し倒されていた。
ぽかんと鬱くんの顔を見上げている私と明らかに目が合っているにも関わらず、何も言ってくれない鬱くん。
その顔は眉間にシワを寄せていて、グッと唇を噛んでいた。
「……どうしたの、」
堪らなくなってそう尋ねたのは、沈黙が辛かったという意味も含んでいたものの、その表情があまりにも切なく、そして少々の怒りを含んでいるように見えたから。
思わず鬱くんに向かって手を伸ばし、流れる長い前髪にそっと指を通した。
黙ってされるがままになっていた鬱くんは、その表情を崩さないまま私の首元に顔を埋めた。
ぽんぽん、と子どもをあやすような手つきで髪を撫でる私の耳に、くぐもった鬱くんの声が響く。
「………ちゅーしたら嫌いなる？」
「、はい？」
今なんて言った？と思わずピタッと動きが止まった私。
ムクリと顔を上げた鬱くんは先程よりグッと顔を近づけて、また先程の表情。
「なに……酔ってるの？」
「酔っとる。酒の力借りて言うとる」
「じゃあそれ、明日になったらしたこと忘れちゃうじゃん」
いや、どう考えても今気にするところはそこじゃない。何故か明後日の心配の言葉を投げかけた私はきっと相当テンパっていたし、目の前の鬱くんも予想外だったらしい私の言葉に少し驚いたように目を瞬かせていた。
すると、いつか見たキュッと口角を押し上げた、意地悪い顔に変わる鬱くん。
「嫌なん？忘れられたら」
ニヤニヤ、顔の脇についていた手は顔にかかっていた私の髪をはらい、ムカつく程に綺麗な指先がツーっと頬を滑った。
ぞわっと背筋が震えるのに、顔を背けられない。そのまま鬱くんを見上げた状態で、震えた身体の余韻は私に素直に物を言わせた。
「ええと……忘れられる前提なのは何となく寂しいな、みたいな」
「は？……もうなんなん？お前、……あーもう遠慮せぇへんで、知らんからな」
え、待って、という陳腐な制止の言葉などこの状況では当然意味をなさず、文字通り遠慮をなくした鬱くんは私の頬に手を添えたまま唇に噛み付いた。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
