34話 ページ34
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いつもより2時間ほど早くオフィスから出て、時刻は午後9時過ぎ。
未だ残って作業をしていたコネシマくんに少し申し訳なくなりながらも、「はよ帰って寝ろ」と鋭くも優しい言葉に背中を押され、それに従った私は今日も疲労困憊で家の玄関を開けた。
朝家を出たときのままの他人の気配がしない我が家は落ち着く場所のはずなのに、誰の気配もしないリビングは寒々しくて、私にとってはなんだか居心地が悪かった。
そう言えば鬱くんには『しばらく遅くなるからご飯作れない』と言ったけれど、忙しい時期を過ぎたら『もう家来てもいいよ』と自分から誘ってもいいものだろうか。
そもそもこの会えない期間に他のアテを見つけていたらどうしよう。
嫌だな、と正直なことを思いながら事務的にご飯を食べ、また事務的にお風呂を済ませてふと時計を見れば、もう11時。
せっかくのコネシマくんの好意を無下にするのは罰当たりかな、と思い今日は早々に布団に入ろうと立ち上がったときだった。
一人きりの静寂の中、鮮明に響いた携帯の着信。
ビクリと肩を震わせ恐る恐る画面を覗き込めば、全く予想だにしていなかった発信元に思わず画面を二度見してしまう。
「もしもし…ショッピくん？どうしたの？」
『あーAさん、遅くにすみません』
耳に当てた携帯から入り込むその声は程よく間延びし、若干の疲れを滲ませた声色だった。
そしてその隙間から外特有の雑踏と喧噪が漏れ聞こえ、今彼が外にいるんだと瞬間的に理解した。
『今会社の飲みの帰りなんですけど、ちょっと面倒なことになってまして、』
「面倒、？」
間延びした声はお酒のせいか、と納得したものの、話の流れ的にその『面倒』は私にも降り掛かってくるのだろうなとチラリと時計を確認しつつ心の中でため息をつく。私今、寝ようとしてたのに。
何を頼まれるのかと場合によってはこんな時間から外へ出る準備をしなければならないと腹を括っていれば、ゲンナリと響く声。
『……鬱兄さんが潰れてるんすけど、この人Aさんの家帰る言うて聞かへんくて』
今すぐそこおるんすけど、連れてってもいいすか、と。
久々に耳に入り込んできたその名前にドキリと胸が高鳴り、寝ようとしていたはずの私は食い気味に「いいよ」と了承の言葉を紡いだ。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
