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29話 ページ29

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一言『やめた方がいい』と言われても、年単位のこの習慣はそう簡単に切り離せるものではなかった。

そもそも私はもう半分以上自分が望んでこの曖昧な関係に身を置いている節もあって、自らそれをやめようとはとても言う気になれない。
家帰れ、と諭すことはあったとしても、鬱くんだってそれを本気で言ってるわけでは無いとわかっているから今までそれに従ったこともないのだ。



初めて他人に咎められたそれに数日頭を悩ませ続け、私の変化に目ざとい鬱くんは当然のように私の様子がおかしい事に気づいていた。


「どないしたん?最近」


嫌なことあったん?と最大限の心配を滲ませた優しい声色でそう尋ねる鬱くん。
歯切れ悪くうーん、と呟き、嫌なことは無い、と事実だけを述べた。

ふぅん、と納得したのかしてないのか読み取れないトーンでそう言う鬱くんは、ソファの上で膝を抱える私の隣にそっと腰を下ろした。


困るなぁ、本当。
鬱くんの気配を傍に感じるだけで幾分穏やかになってしまう胸の内は一体どうしたらいいのか。
全身で私に安心感を与えてくれる鬱くんは、今後いつまで私とこの関係を続けるつもりでいるんだろう。怖くて聞けないその問いは胸の中で燻るだけに留まって、私の口から吐き出されることは今日もなかった。


ぼんやりと黙ったままの私に何か言及するのでもなく、見当違いな慰めの言葉をかけるのでもなく、鬱くんはただ黙って隣にいた。

何も言わず、隣にいてくれた。


「…ねー、鬱くん」
「うん?」
「なんで私だったの?」
「え?」


口をついて出たのはそもそもの疑問だった。
鬱くんのためなら毎晩ご飯を提供してくれる人だって他にも沢山いただろうし、それこそ毎日だって家にいて欲しいと思っている人も今だってどこかにいるかもしれない。

それなのに、鬱くんは今紛れもなく私の隣にいた。
私と同じ匂いのする髪で、私と同じ匂いのする服を着ながら。


唐突な私の問いに驚いたように目を開いた鬱くん。
そして、小さく笑って私に手を伸ばした。


「Aがよかったから…って言っても、どうせ信じひんやろ」
「うん、分かってるじゃん」
「冷たいねんもん、Aは」


ほんまのこと言うてんのに、と口を尖らせながら私の髪に指を通す。

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おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます&ありがとうございますっ!!凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください!! (4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます!生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…!次回作も楽しみにしています! (4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ - 更新、頑張ってください!!陰ながら応援してます...!!長文、連続コメ失礼いたしました...。 (4月24日 11時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ - くっつき方が他の作品とかでは見ない流れですね...若干もやもやはするものの、キュンキュンして、やっとくっついたぁ...って思えます!何か、ちゃんと告って、っていうよりかは、サラッと気持ち伝えて、ぬるっと付き合った感じ...(語彙力皆無)とても面白くて好きなんで (4月24日 11時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年3月22日 1時

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