37話 ページ37
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拒む間もなかったのか、そもそもまた拒む気など無かったのか、どちらにせよ私は食むようにして何度も重なるキスをまたしてもすんなり受け入れていた。
私、とうとうこんな行為まで何となく受け入れちゃうのか、と混乱する頭は逆に冷静にそんなことを考えていて、それが伝わったのか「…何余計なこと考えとんの、」と一瞬離された唇の隙間から飛ぶ声に思考を引き戻される。
「……あーあ、またそうやって受け入れんねや」
呆れ声、と思わせつつその顔を見ればゆるゆるに緩みきっていて、意図的にそう言っているだけだなと納得。
だって嫌じゃないんだもん、といつか言った言葉をまたしても口にすれば、「それタチ悪いよな」と何故か顔を顰められる。
「……なんで嫌ちゃうの？」
「なんでって………鬱くんだから？」
「ふ、疑問形やん」
せめて言いきれよ、と笑ったその顔はまた伏し目がちに近づいてきて、反射的に目を閉じた。もう、私は最初から拒む気などなかった。
感触を確かめるように触れていた唇の余韻に浸りつつ、次の瞬間割って入ってきた舌にビクリと肩を震わせた。
思わずキュッと鬱くんのシャツを握った私の手を器用に絡めとってソファに縫い付けながら、鬱くんは片手で鬱陶しそうに眼鏡を床へ放り投げた。
割れちゃう、と状況を棚に上げた見当違いな心配も一瞬でかき消される。
「かわいい」と低く呟かれた鬱くんの言葉によって。
「それ………っずるい、」
「なに？ほんまのことやん。可愛いで」
堪らず唇を離した私は息も絶え絶えにそう訴えたのに、涼しい顔で返り討ちに遭う。
そんなの、今まで一度も言ってくれたことなかったのに。
こんな時に限ってそれを言う鬱くんはかなり性格が悪い、というより女が喜ぶツボを心得ている。それに人知れずまた腹が立った。
「もー、また何怒っとん、」
「知らない。鬱くんなんか」
「なんでや、ちゅーしても怒らんかったくせに」
うぐ、と言葉に詰まる。
言い返せないその指摘はご最もだった。
押し黙った私の頬をクルクルと弄んでいた鬱くんの指先は、そのままスっと首筋へ落ちてくる。
こそばゆいような感覚にピク、と身体が震え、それをじっと見ていた鬱くんはまたそこへ顔を押し付けた。
瞬間、かぷりと噛まれた痛みとチクリと鈍い痛みを感じてまた肩が跳ねた。
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
