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3話 ページ3

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けれども。
今まで全く出会いが無かったとか、彼氏が一度もできたことがないだとか、そんなことはない。

ないのに、なぜ今この体たらくかと言えばそれは確実に私の性格と鬱くんの存在が問題だった。


今朝、簡易な朝食を当たり前のように2人で食べ、「戸締りは任せてや」とこれまた当たり前のように彼の手中に収まっていた合鍵をチラつかせつつ私を見送った鬱くん。

部屋の鍵、普通男友達に渡すものかなぁ?と今更すぎる疑問を抱きつつ電車に乗り、悶々としながらオフィスの扉をくぐった。


「……おはようコネシマくん」
「おう。ジメジメした顔しとんな」
「誰がコケだ」


その例え的確やわ、とうんうんと頷く同期のコネシマくんを尻目にその隣に座り、本日何度目かカウントもしていないため息を盛大に吐き出した。ちなみにこのため息は朝から隣の同期が腹立つ、という意味も込めているわけだが。


「昨日車ですれ違ってん、大先生と」
「ああそう、よかったね」
「いいわけあるか。お前だけやで、好きでアイツとベタベタしとるん」


私だってあんな大きな子どもの世話をする趣味があるわけじゃない、と言いかけたけど、無駄な口論になるだけだと目に見えていたので黙る。沈黙は肯定と言うけれど、皮肉にも私はベタベタする鬱くんを許してしまっているという事実がある以上、下手に否定もできない。


「お前昔っから男の趣味おかしいもんなぁ……クズみたいなんばっかと付き合うやん」
「否定できないこと言うのやめてくれる?」
「だから俺は思っとんねん。いつ大先生と付き合うことになるんやろって」


報告待ってんで、と大して興味もないくせにただ面白がっているだけの顔を向ける彼に持っている中指を全部立てて反抗の意を示してみたが、済ました顔でメールチェックをしている彼には痛くも痒くもないらしい。


私も、鬱くんと付き合えば全てのことが万事解決すると分かっているけれど、中高生のようにそう簡単にいかないのが半端な大人の面倒なところ。
事実、これだけ私にベタベタと付きまとっておきながら鬱くんは私を好きだとか付き合いたいだとかいう気持ちは特にないらしく、所謂発散したい日があれば家には来ない。

全て彼の気まぐれだった。ほぼ毎日家にやってくるけれど、来ない日だってある。その来ない日はどこでご飯を食べているのか、はたまた誰かに食べさせてもらっているのか、私はなにも知らないのだ。

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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです(笑)tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます&ありがとうございますっ!!凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください!! (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます!生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…!次回作も楽しみにしています! (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年3月22日 1時

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