第五章 【理想怪奇「死竜魔」】 ページ38
その時、夢乃を中心に庭園の中を温かな光が包み込んだ。その光の衝撃波を前に、ホーリィブレイドは吸収を拒む。そして光の衝撃波を浴びると、アップルの目には夢乃の姿が見えた。
……違う。彼女は光の外側だ。夢乃はアップルよりも大きく映し出されており、右手で光を包んでいた。夢乃が大きいのではない。右手の中に入っている小さな光の中に、アップルが捕まったのだ。
「これで、アンタもお仕舞いよ」
激昂する事もなく悲観する事もなく。夢乃は右手に収められた光の結界を握った。右手の指の隙間から光が漏れる。その光がまた周囲を包んでいき……。
その光が止んだ時には庭園の中心、テラステーブルの上で突っ伏したアップルの姿があったのだ。夢乃は夢の珠が置かれている祭壇へと足を運ぶ。
「……ブルー……、」
未だ息があるアップルを放っておきながら、夢乃は家宝に手を触れようと腕を伸ばした。
しかし、触れる直前に魔法陣が淡く光りだす。
「お願い……ブルー……。目を、覚まして……」
彼女の願いに応えるように夢の珠が眩い光を放った。祭壇の前に置かれていた棺桶がガタガタと振動する。何か得体の知れないものが飛び出してくるのか……。そう身構えたが、棺桶は案外あっさりと停止した。魔法陣もそれに応えるように光を徐々に失っていく。夢の珠は夢乃の手の中にあり、怪奇の収束を示している。
夢乃は何も言わずに去る。庭園の扉が開き、ルナディがアップルの元へと駆け寄って介抱する。その様子を横目に、俺もこの場所を後にした。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時