第五章 【理想怪奇「死竜魔」】 ページ36
振り上げられる結晶武装を回避し、相手の懐に潜り込む。魔剣を携えて振り下ろすも強固な鱗で弾かれる。腕にはびっしりと真っ黒な竜の鱗が現れており、それらは主人を守り切ると通常の皮膚に戻っていく。
さらに攻撃は続く。鋭利な爪を立て、引き裂かんと言わんばかりに右腕を振り下ろしてくるその攻撃を魔剣で受け止める。その衝撃は人間と比べ物にならない程であり、衝撃波が庭園の木々たちをざわつかせる。
「アビリティ変換、」
「マジか───!!」
「『赤き血潮のサラマンダー』!!」
彼女の口から炎が吹き上がる。瞬間、身も焦げるような熱が襲いかかった。相手は炎を纏い、結晶武装を縦横無尽に振りかざすその様は『怒れる邪竜』とも言えるだろう。魔剣を素手で掴まれ、思い切り振り回され、そして地面へと落とされた。
「さあ、邪悪なる竜をお前たちの手で鎮めて見せろ!私の怒り、不甲斐なさ故の後悔、そして魔族へ滾らせる復讐心をっ!かの戦争で未来を奪われた家族を想って何が悪いか!!お前たちの力で答え、そして証明してみせろ!欲望の体現者、人間の少年少女よ!!」
啖呵を切る相手は炎を吐き出し、それはレーザーとなって襲いかかる。被弾したところから更に結晶弾が散らばり、逃げ場を覆っていくだろう。
「出し惜しみはなしだ。先手は貰うぜ、夢乃!」
魔剣のグリップを握りしめて刃を掲げる。刃はあらゆる光を吸収し、巨大な剣に変貌した。
「魔剣、心象解放!」
『閃光剣 ホーリィブレイドの心象解放の申請を受諾。魔力、規定値に達しました。心象解放の演算を開始。光力、規定値を突破しました。オールグリーン』
「これが俺の全身全霊、ホーリィブレイドの真骨頂!
ファイナルアビリティ!『閃光剣 シャイニングブレイド』おおぉぉぉ!!」
刃を向け、地面を蹴り上げた。瞬間、その速度は加速を始める。
閃光剣ホーリィブレイドの奥の手にして強み。それは『光の速さを再現すること』だ。音速を越えて光と同化し、相手に全身全霊の猛突進を仕掛ける肉弾技である。シンプルだが相手は光の速さを回避することは難しいだろう。時間を止めない限り光は何よりも早く、そして真っ直ぐなのだから。
閃光は相手の体を貫き、炎を掻き消した。相手はゆっくりと地面に倒れ伏す。
しかし、諦めの悪いアップルはまだ立ち上がる。ふらふらと足取りは悪く、満身創痍であるにも関わらず彼女の瞳はまだ戦えると訴えてくる。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時